夢見る森
Wkumo
いつまでも
失われたものが遠く、ある。
そこにあるのかどうかはわからない。振り返っても見えないのだ。
だがしかし、失われたものは確かにある。
何が失われたのかはわからない。失われたことしかわからない。
いつの間にか、死んで、いなくなっていた。
「不在」だ。失われたものは不在、それがずっと続いてきた。
失われたものが居たころのことを思い出そうとしても記憶はおぼろげで、靄に包まれた森が広がっているだけ。
森は深い。
覗き込んでも何も見えず。
生きているのかいないのか、確かに己の記憶のはずなのに、別の生き物のようだった。
それは森で、ひょっとすると森でないものかもしれなくて、それであるということがわかってさえいれば究極どちらでもいいのだが、失われたものはおそらく、本物の森なのだ。
本物の森は全てを明らかにする、なぜなら本物の森は明らかなものだからだ。
靄がかかって何一つ見えないまやかしの森とは違うもの。
まやかしの森。つまり俺の記憶はまやかしなのか?
似たようなものだ、と思う。森も森でないものも、まやかしもそうでないものも、それが失われたもの、見えないものなら全ては同じ。
ゼロになる。
存在しないのだ。
失われたものだから。
だから俺はここに居る。
待っているのだ。
そのときが来るのを。
何が起こるのかはわからないが確実に確からしく、新しく、開けている、海。
森でないものは、海の夢を見ている。
夢見る森 Wkumo @Wkumo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます