第228話
鉱石展示から逃げるように飛び出し、俺らは次に3年生のエリアに入った。
3年のエリアは、今年はクラスごとの展示ではない。
1組から6組までの合同で、巨大お化け屋敷にしているらしい。
それが超満員で、開催初日から2時間待ちの超行列になっている。
が、今のタイミングは少し人が捌けていて、ちょっと待つだけで直ぐに入れそうだ。
「どうする? 入る?」
「却下」
「私入るー!」
「琴乃が一緒なら、私も入ります!」
「よし、入るか」
「あれ? 私の意見は?」
俺の服の裾を掴んで止めてくる梨蘭。
目にはうるうると涙が溜まっていて、掴んでいる力も弱々しい。
「あれ? 梨蘭たん、怖いの苦手?」
「なんか意外です。姐さんって、苦手なものないと思ってました」
「う、うん……」
前に一度聞いていたが、こんなに怖がるとは。
…………。
「よし、行こう」
「暁斗!?」
「前に梨蘭、俺が絶叫系苦手ってわかってて連れてったよな? 今日は俺に付き合ってもらうぞ」
「ま、待って待って……! それ許してくれたんじゃ……!」
「ああ、許してはいる。けど心情的に連れて行きたい」
「鬼! 悪魔! 人でなし!」
ふはは、なんとでも言うがいい。
「わぁ、暁斗センパイ悪い顔~」
「お兄って、そういうところが子供っぽいよね」
そこ、だまらっしゃい。
逃がさないように梨蘭の手を握り、行列の最後尾へと並ぶ。
今ならなんと30分待ち。しかも、俺らが並んでから更に人が並び始めた。
「運がよかったな」
「よくないよくないよくないよくないよくないよくないよくないよくない……!」
めっちゃビビるじゃん。
でもこんなにビビり散らかす梨蘭も新鮮だ。
琴乃と乃亜が前。俺と腰が引けてる梨蘭が後ろに並ぶ。
俺の腕を掴んで離さない。というか、逃げそうな気持を必死に抑えてるみたいだ。
「まあまあ。お化け屋敷といっても、高校生が作ったもんだ。そんなに怖くないだろう」
「そ、そうかもしれないけどぉ。そうかもしれないけどぉ……!」
ぷるぷるぷるぷる。めっちゃぷるぷるしてる。可愛い。
震えている梨蘭の手をしっかり握り、待つことしばし。
「それでは、続いてどうぞー」
「あ、私達だ。それじゃあお兄、お先にねー」
「センパイ、姐さん。また後ででーす」
琴乃も乃亜も、平然と入っていった。
相変わらず、こういうの好きだなぁ、2人は。
2人が中に入っていきしばし。
「「にゃーーーーーーーーーーーーーーー!?」」
「ひぅ!?」
おー、結構叫んでるなぁ。そんなに怖いのか?
「あ、あ、暁斗。引き返すなら今のうちよっ。今ならまだ間に合うわ……!」
「いや、ここまで来たら入るしかないだろう」
「ほ、ほら、私達が列から離れたら、後ろの人が早く入れるわ。これは人助けよ」
どこがどう人助けになるんだ。
「はい、続いてお2人様どうぞー」
「あ、はい。それじゃあ梨蘭、行くぞ」
「いやぁ、いやぁ……!」
◆
おお、中々雰囲気あるな。
廊下から既に薄暗いし、ブラックライトで気味悪さが演出されている。
ルートとしては、廊下から各クラスを巡り、反対側がゴールになっているみたいだ。
スタートには懐中電灯が1本用意されていて、これを手に回るみたいだ。
「よし、行くか」
「うぅ、暗いよぉ、怖いよぉ……!」
完全に腰が引けてる。しょうがないな。
梨蘭の手をしっかり握ると、涙目の梨蘭が離れないように腕を掴んできた。
「あ、あ、暁斗。絶対離れないでよ。悪ふざけとかして離したら、一生恨むわよ! 一生許さないからね!」
「はいはい。大丈夫、一生離さないから」
「ほ、本当よ!? ホントに本当だからね!?」
目がめっちゃガチだ。ガチすぎて怖い。
ここまで怖がると、可哀想に思えてきたな……さっさとゴールして、甘いものでも食べに行こう。
こうして、俺と梨蘭の初お化け屋敷デートがスタートしたのだった。
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