第170話
「ただいま」
「お邪魔します!」
「姐さん、おじゃましまーす!」
元気だなぁ2人とも。
「うっひゃー! ひっろー!」
「ウォークインシューズクローゼットとかあるー!」
玄関の広さにテンションが上がっている琴乃と乃亜。
と、廊下の奥からエプロン姿の梨蘭が出てきた。
「お帰りなさい、暁斗。琴乃ちゃん、乃亜ちゃん。いらっしゃい」
「お、おおおぉぉぉ……! 梨蘭たんの若奥様感……!」
「姐さんえっろ……じゅるり」
「ものすごい身の危険を感じるんだけど!?」
いや、確かに梨蘭のエプロン姿はエロい。
別に露出が高いわけでもない。けど、ミニスカにティーシャツの上からピンク色のエプロンは……うん、かなりそそられる。
って、見惚れてる場合じゃないっ。
「ほら2人とも。まずは挨拶」
「あ、そうだった。梨蘭たん。お世話になりまーす!」
「まーす! これ、つまらないものですがお菓子です!」
「そんな。気を使わなくてもいいのに……ありがとね。琴乃ちゃん、乃亜ちゃん」
梨蘭は甘いものに目がないからな。
もし梨蘭が犬だったら、尻尾をぶんぶん振り回してるところだろう。可愛い。
2人を連れて1階のゲストルームに案内する。
ゲストルームの中でもかなり広く、ベッドも2つある。
テーブルも椅子もあるし、ここで勉強も問題なくできる。
それにトイレとシャワー室も付いているから、2人も文句はないだろう。
「ここが2人の部屋だ。2人専用に空けておくから、いつでも泊まりにきて大丈夫だぞ」
「お兄大好き!」
「さっすが暁斗センパイ! 愛してます!」
「へいへい」
そういうのは自分の運命の人に言ってやれ。
2人は自分の荷物を持って部屋に入り、部屋の中を物色し始めた。
わかるぞ、その気持ち。俺もここに来た初日はそんな感じだった。
「全く。暁斗は2人に甘いのよ」
「そんなことはないぞ。厳しいところは厳しくしてるし、甘やかすところは甘やかしてる」
「……これは、あの2人の運命の人は大変ね」
「どうして」
「比較対象が常にアンタだからよ」
……比較対象が俺だから、なんで2人の運命の相手が大変なんだろう。わからん。
「お兄! 家の中探検したい!」
「私も!」
「おー、いいぞ。まだ引っ越してきて日も浅いから、面白いもんはなにもないけど」
「大丈夫! お兄と梨蘭たんのイチャラブの形跡が見つかればそれで十分だから!」
「「ちょっと待って!?」」
別にやましいものは置いてないし、この家に来てから梨蘭といきすぎたイチャラブはしてないけど!
でもそれを目当てに探索されるのは困るというか、恥ずかしいというか!
「おやおやぁ~? センパイ、その慌てようは怪しいですな~」
「お兄もむっつりスケベさんだからな~」
「琴乃ちゃん、その情報詳しく!」
「話さんでいい!」
そりゃあ梨蘭みたいな美少女と一つ屋根の下だから、いろいろと思うところはあるさ。
プロポーションも高校生離れしてるし、可愛いし、胸大きいし、可愛いし!
でもむっつりじゃないから! ……ないから!!
「わかったわかった。今は話さないよ、今は。梨蘭たん、夜部屋来てね。女子会しよう、女子会」
「わ、わかったわ。暁斗のむっつりエピソード、楽しみにしてるからっ」
「せんでいいから!」
あぁ……なんか疲れた。
2人は梨蘭を連れて家の中を探索に向かい、俺は1人リビングでくつろぎ中。
この家も広いからな。案内の梨蘭がいないと、下手すると迷う可能性があるし。
家のあちこちから楽しそうな笑い声が聞こえる。2人とも、楽しんでんなぁ。
思えば、こんなに賑やかなのは初めてだ。
この家、俺と梨蘭の2人だけだし、いつも一緒に行動してるから……子供ができたときって、こういう感覚なんだろうか。
2人の子供がお母さんと一緒に遊んでいる声を聴きながら、コーヒーに舌鼓を打つお父さん。
こういう休日って感じがしていいな。
子供か……梨蘭はいったい何人くらい欲しいんだろう。
正直、俺と梨蘭ならどれだけ子供がいようと経済的に育てられる自身はある。
ただ多すぎた結果、夫婦の時間が取れなくなるのは嫌だ。
どれだけ忙しくても、梨蘭との時間は大切にしたい。
となると、やっぱり3人……多くて4人くらいだろうか。
いいな、それ。可愛い息子、娘に囲まれる生活。素晴らしい。
将来のことを考えていると、ついにやけてしまう。
あー、でも琴乃の血も混ざってるんだよなぁ。それに梨蘭の血が混じると、気の強いお転婆な子供ができそうだ。
……それはそれで可愛いな。梨蘭も琴乃も可愛いし。うん、あり。
「ねえ暁斗。何考えてるの?」
「ああ。子供は何人欲しいかなって考えてた」
…………ん? 俺、今誰に答えた?
声のした方を振り返る。
そこには、恥ずかしそうにもじもじする梨蘭と、にやにやしている琴乃と乃亜が。
「……むっつり暁斗。ふんっ」
「センパイ、むっつりさんですね」
「ね、言ったでしょ?」
オウ……。
さっきのセリフ、がっつり聞かれたよなぁ、そうだよなぁ。
急激に体が熱くなり、みんなから顔を隠すようにしてクッションに顔を埋めたのだった。
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