第42話
梨蘭、最後に俺が喫茶店に入る。
駅前にある喫茶店だが、昔ながらのレトロな空間をコンセプトとしている、割と人気の店だ。
高校生はいないが、お茶をしているマダムや営業途中のサラリーマン、カップル、大学生など、結構な人で賑わっている。
が。
「おぉ……」
「すごい美形ばかり……」
「美男美女集団とはこのことね」
「眼福だわ」
「あの小さい子、可愛いな」
「俺はあの金髪の子が……」
「いやいや、黒髪ロングこそ正義だろ」
うーん、やっぱ目立つなぁ。
梨蘭と竜宮院は言わずもがな。学年どころか、学内を見ても最上級の可愛さだ。
寧夏も小さいが、子供らしい可愛さとどことなく謎めいた雰囲気がある。
龍也も高身長イケメンだ。いつも快活な笑顔だし、見るものを元気にする感じ。
うーん……俺の場違い感。
美形集団だからなぁ。余計俺のノーマルさが際立つというか。
これは中々きつい。今更だけど。
テーブル席に着くと、椅子側が俺と龍也。ソファー側に女子3人が座った。
俺の前に梨蘭。その隣が竜宮院で、その隣が寧夏の順だ。
そんな中、竜宮院が俺の顔を見て首を傾げた。
「真田君、どうしたの? 顔色が悪いけど」
「気にすんな。体調不良じゃないから」
「そう?」
「ああ。ただ現実に打ちのめされているだけなんで」
「それはそれでどうなのよ……」
現実って残酷だなって思ってるだけですから。
女性の店員さんが人数分の水とメニューを持ってくる。
その目は、終始龍也に釘付けだ。
「そ、それでは、メニューが決まりましたらお呼びください」
「あざすっ」
ニカッ。いい笑顔だ、龍也。
「……ギャルゲなら3番目くらいに人気が出そうなヒロイン顔だな」
「さすがリューヤ、よくわかってる」
「「へーい!」」
おいコラそこ2人。残念発言すんな。梨蘭と竜宮院も引いてるぞ。
馬鹿2人からメニューに目を移す。
相変わらず、喫茶店なのに豊富なメニュー量だ。スイーツは勿論、食事もできそうだな。
ここで飯にするのもいいが、夕食を食うとなると話は別だ。スイーツを少しだけ食おうかな。
となると、ケーキかパフェか……よし。
「みんな決まったか?」
「俺とネイは決まってるぜ」
「私もいいわよ」
「私は……うん、オーケーよ」
「はいよ。すみませーん」
店員さんを呼ぶと、さっきの人が足早に近付いてきた。
「はいっ、お待たせ致しま……」
……え、何で俺見て固まってんの? 俺の顔に何か付いてる?
「……あの?」
「……あっ! す、すみません……!」
今度は思っきり目を逸らされた。ちくしょう、何でだ。そんなに見られたもんじゃないか、俺の顔は。
「っ! いだっ!?」
す、スネ蹴られた……! このっ。
「おい久遠寺、何で今蹴った……!」
「当たっちゃったのよ。ふんっ」
いや、今のはどう考えてもわざと蹴ったろ……!
くそ、やっぱりこいつ、何考えてんのかわかんねぇ!
「ほらそこ、イチャイチャしてないで」
「「してないわ!」」
今のはイチャイチャじゃない。どう考えてもただの暴力だ!
みんなもそう思うだろ!?
……みんなって誰だ。
「暁斗が頼まないなら、俺から注文すんぞ。お姉さん、スーパーコスモ級ウルトラデラックスパフェを2つ。俺とこの子の」
「スーパーコスモ級ウルトラデラックスパフェ〜」
「えっと……こちら、通常4名様用なんですが……」
「俺とこいつなら食えるんで大丈夫っす。な、ネイ」
「よゆーよゆー」
マジでこいつらの腹、ブラックホールに繋がってるんじゃないかってレベルだもんな……ま、こいつらは心配ないか。
「は、はあ。それでは、無謀パフェが2つですね」
おい、この店スーパーコスモ級ウルトラデラックスパフェを無謀パフェって言ってんだけど。
そんなもんを1人で食べるって、やっぱとんでもない──。
「いえ、3つよ」
「……久遠寺?」
え、こいつも無謀パフェにすんの?
竜宮院も驚いたのか、目を見開いて梨蘭を見た。
「り、梨蘭ちゃん、大丈夫? ここのパフェ、本当に大きいって有名だけど……」
「大丈夫よ。今日は食べられる気がするわ」
どこから湧くんだその自信は。
「そ、そう……なら私は、ショコラムースとホットティーで」
「はい、ショコラムースですね」
最後は俺か。
…………。
「ブラックコーヒー、ホットで」
「はい、かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
店員さんはお辞儀をすると、そそくさと厨房へ向かっていった。
「暁斗、どうしたんだよ。さっきまではパフェに乗り気だったのに」
「あー……念の為だ」
「なんだそりゃ?」
念の為と言ったら、念の為なの。気にすんな。
その後、みんなと談笑しながら待つこと10分弱、
ついにその時がやってきた。
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