真面目に言ったのか、ボケたのか。未だに私を悩ますあの時のこと

徳野壮一

第1話

「私が高校3年生の時のことの話です。時期は10月でこの時期になると、大学受験や就職にと、頑張って勉強をしていました。私も例に漏れず授業後、教室に残り机に向かっていました。私が通っていた高校はレベル的には中堅だと思います。チャイムがなり下校時刻になると私のクラスに同じ中学に通っていた仲間3人が集まってきました。私達は部活がない日は帰り道が同じなので一緒に帰宅しています。本名だとあれなのでT君、S君、K君と呼び方にします。高校卒業後の進路は、S君は実家を継ぎ、T君と私は大学受験を、そしてK君は消防士になると言っていました。私達は電車通学をしていました。私達の最寄駅は普通しか止まらない駅で、乗り換えも面倒ですし、したとしても最寄駅に止まる電車の時間は変わらないので急行、準急に乗らず普通電車を待っていました。駅のホームにあるベンチで電車を待ってる間、屡々時間があるのでK君がSPI対策の問題集をT君に手渡し、問題を出してくれと頼みました。T君は了承し、どうせならみんなでやろうと私とS君も問題を解く事にしました。いくつか問題を出した後、今も時々思い出しては頭を悩ます問題の問題をT君は出してきました。四字熟語の問題です。『一人で千人を相手できるほど強いことを表す四字熟語は?』とT君は言いました。私は直ぐに『一騎当千だ』と思いました。この4人の中では1番私がテストの結果はよかっです。自慢ではありませんが、勉強せずとも常に10番以内には入っていました。が、そうでなくとも直ぐ思いつくような簡単な問題だと私は思いました。私は答えを直ぐには言いませんでした。K君の為にやってる問題なので、先に答えを言うのを自重したのです。K君は意外にも悩んでいました。S君も答えが分かっていないようで、アレ?この一騎当千って意外に知らないのかなと思っていると、思い出した(後から思うと、思い出したわけではなく、思い付いたが、正しい表現だと思います)K君が答えました。『千手観音』と。そのときちょうどテレビで《ハンターかけるハンター》が終わった後でしたので、私はK君が何を思い出していたか直ぐに察しました。私は面白くて思わず吹き出してしまいました。確かに強かったもんね会長。個人的にはとても面白いボケでしたので、『なんでやねん!K君絶対ハンターかけるハンターみとったやろ!』とツッコもうとしました。しかしK君を見たらとっても真面目な表情をしていました。T君とS君は失笑した私を、訝しげに見ていました。私だけが笑ってました。尻すぼみに笑い声は消えていき、ツッコもうとあげた私の手は行き場を失い、中途半端な位置で止まっていました。

K君はボケたのか、いないのか。これが私の頭を悩ましている問題です。K君はボケだけど、S君とT君が笑っていなかったから、真面目な顔をしていたのかしれませんし、ボケていないのなら、千手観音像を一騎当千の意味でK君に使わせた漫画やアニメの恐ろしさを感じます。その時にK君にボケたかどうか聞けばよかったのですが、聴きそびれて今に至ります。貴方はK君はボケたと思いますか?それともボケていないと思いますか?」

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