ゴシック的描写研究 漆回目(単語・語彙編②)

・塗炭の苦しみ(とたんのくるしみ)・・・・・・・泥にまみれ、陽に焼かれるほどの非常な苦しみ。

ex.理由もなく火炙りにされる姉を見て、妹は塗炭の苦しみに苛まれた。


・ウァニタス・・・・・・・(ラテン語で)空虚・むなしさ

ex.「ヴァニタス画」という静止画のジャンルがある。これは、16~17世紀に流行ったもので、絵の中に死を思わせる髑髏や、いずれ枯れてしまう運命にある果物や花、栄枯盛衰を表す時計などのモチーフを多用した、「メメント・モリ」によって生まれた画法だとされている。


・嫣然(えんぜん)・・・・・・・(美人が)にっこりと笑うさま。

ex.唇に手をあて、嫣然とした嬌態を晒した彼女は、すぐさま王の肉欲の的となった。


・蹌踉(そうろう)・・・・・・・足元の確かでないさま。よろめくさま。

ex.蹌踉とした足取りで数歩進んだのち、その兵士は力尽きてしまった。


・魑魅魍魎(ちみもうりょう)・・・・・・・いろいろな化け物や怪物。

ex.「ああ!」番兵はその怪物の姿を――魑魅魍魎そのものを見て悲鳴をあげた。おぞましい醜悪な怪物が、彼の妹の体を貪り喰らっていたのだ‼


・塵芥(ちりあくた)・・・・・・・値打ちがないもののたとえ

ex.塵芥とある遺体の中から、彼は実験に使えそうな健康的な肉体をいくつか選んだ。


・潰走(かいそう)・・・・・・・戦いに敗れ、散り散りになって逃げること

ex.潰走の兵士だろうか。悲壮感漂うその表情や、肩から流れる鮮血は、平穏な生活をしていた私には見慣れないものであった。


・十字を切る・・・・・・・キリスト教のカトリックにおいて、神に祈りを捧げる時、胸の前で手で十字の形を描くこと。

ex.降り注ぐ夥しい爆弾を見上げながら、敬虔な教徒たちは十字を切った。


・傀儡(かいらい)・・・・・・・操り人形。転じて、人の手先になってその意のままに動くもの。「指先」とほぼ同義。

ex.伯爵の傀儡となった少女は逆らうことを禁じられ、伯爵が言った通りに股を開いたり、張形の使用を強制された。


・死の舞踏(トーテンタンツ)・・・・・・・時代背景は百年戦争の頃。ペストも流行っており、「メメント・モリ(死を思え)」の精神のもと広がったとされる。死の恐怖を前にして、半狂乱になり、踊り続けること。

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