子供ドラゴン

ジャック捜査隊

「はぁっ、はぁっ、……」

1人の隊員が、必死に走っていた。背後には小さなドラゴン。

「どうして、こんな事……早く、クロード隊長に……」


 * * *



「失礼します。クロード隊長。お呼びでしょうか」

 隊員が呼びかけた先には、銀色の髪を持つ眼帯をした男が座っていた。

彼の名はクロード・アルフォンス。ジャック捜査隊の隊長だ。

不器用だが部下思いで、隊員達からとても信頼されている。

「ああ。……キミも知っているとは思うが、隊員が数人行方不明になった。その事について、捜査を頼みたい」

「捜査、ですか?……エシュロンさんに頼めばいいのでは?」

「エシュは今街を見回り中だ。呼び戻すわけにもいかない」

「そう言えば、そうでしたね。わかりました。隊長は同行するんですか?」

「いや、私は同行しないよ。別の仕事があるからね」

 失礼しました、と言って隊員は隊長室を出て行った。

ふうっ、とため息を吐いて立ち上がる。

「仕事が多くて大変だ」

外套を羽織り、捜査隊の施設を出た。


  街を出たクロードは、仕事先に行く為に森を歩いていた。

「バルは今日いるかな……ん?」

少し先に、何かの影が見える。怪物だろうか。

「見てみるか」


「ぅ、……」

「……!大丈夫か!?」

 影があった場所に行ってみると、男の子が倒れて苦しそうにしていた。

揺すったり声をかけたりしてみるが、反応がない。

呼吸はしているから、生きてはいるだろう。

「おぶって連れて行こう」

 仕事を済ませたかったが、人の命がかかっているのであればそちらが優先だ。

クロードは男の子を背負って、捜査隊の施設へと戻って行った。


 捜査隊の施設に戻ってきたクロードは、男の子をベッドに寝かせた。

仕事を片付けつつしばらく様子を見ていると、男の子がうっすらと目を開けた。

「君、だいじょ……」

「おとう、さんだ……おとうさん」

いきなり男の子に抱きつかれ、困惑するクロード。

それに、聞き間違えでなければ、お父さんと言われた気がする。

「あの、離してはくれないだろうか」

「あ、れ?おとうさんじゃない?あなたは、だれ?」

「クロードだ。ジャック捜査隊の隊長をしている。君、どうして森の中で倒れていたんだい?」

「ぼくの、おとうさんとおかあさん、いなくなっちゃったから、探してた」

 悲しそうな顔をする男の子に、クロードは親が見つかるまでここで保護しようと考えた。

「名前、言えるか?」

「ぼくは、レグルス……ドラゴン、だよ」

「ドラゴン??」

「おにーさんは、ぼくのこと、きらわないんだね」

 ドラゴンは、怪物に分類される。人を襲うため、捜査隊では見つけ次第殺している。

まさか、この子がドラゴンだったなんて。

「うーん……」

「クロードお兄さん。ぼくのおとうさんたち探すの、一緒にしてほしい、な」

探してあげたいという気持ちはあるが、この子はドラゴンだ。

その事実を知ってしまった以上、返事ができない。

どうすればいいだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

クロードと迷子の怪物 如月雪人 @Kisaragiyukito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る