48 二次会
二次会は、隣駅の繁華街にあるバーを貸し切っていた。
私は主に大学の友達やテニスサークルの仲間や先輩、征士くんは高等部の同級生や中等部のときのテニス部の仲間を招いていた。
貸し切りなので、飲み放題に食べ放題。ただし、征士くんの友達は未成年ばかりなので、ソフトドリンクだ。
受付は玲子ちゃんに頼み、司会は弥生さんに頼んでいた。
二次会が始まると、弥生さんはノリノリで皆に質問した。
「はーい。ではここにいる征士くんと月乃ちゃん、どちらがより一層相手のことが好きでしょうか?」
征士くんと並んで、店の奥に座っていた私は、ぎょっとした。深見くんが手を挙げた。
「勿論瀬戸……いや、もう虹川か。征士に決まっています」
「そうだよね、いつも、高等部で虹川さんのこと好きって宣言していたもんね」
「バレンタインチョコも、本当に虹川先輩の為に断っていたし」
志野谷さんと山井さんも口々に言う。石田さんも苦笑していた。
「まさか虹川を賭けての勝負なんて思わなかったよ。執念で試合に勝っていたな。年下にテニスで負けるのは、初めてだった」
弥生さんが次の質問をする。
「プロポーズをしたのは、どちらからでしょう?」
すると今度は、玲子ちゃんが手を挙げた。
「征士くんからです。サプライズでプロポーズしたいから、月乃ちゃんの指輪の号数を教えて欲しいって、私へ頼んできました」
サークルの同期が驚いて言った。
「サプライズでプロポーズ? 高等部生のくせに、やるね。私の彼もサプライズでプロポーズしてくれないかなあ」
「私もぴったりの指輪欲しい~」
征士くんに告白した下級生の子も話に混ざってきた。
「まさか私より年上の虹川先輩を好きだなんて思わなかったよ。振り向いてもらえて良かったね」
「ありがとうございます。先輩の応援のおかげです」
征士くんははにかんだ。いや、私の方が恥ずかしい。何の羞恥プレイだ。
「じゃあ次に、余興へいきまーす」
大学の友達が歌を歌ってくれた。その他に若竹くんがマジックをすると言った。
「はい。では、ここにあるテニスボール。布を被せて呪文を言うと消えます」
若竹くんは怪しげな呪文を唱えた。布を取ってもテニスボールは消えなかった。
「あ、あれ。おかしいな。練習では上手くいったのに……」
「全く若竹は~。肝心なところで締まらないよね」
「だからモテないんだよ」
口々にからかわれ、若竹くんは項垂れていた。
ビンゴゲームでは、一番にテニス部部長だった藤原くんが上がっていた。二番目は要くんだった。
「景品何だろう? あ、俺、新しいゲーム機のハードだ」
「俺は双眼鏡です。これで遠くの試合も観られます」
そんな風にわいわい騒ぎながら、最後に私と征士くんの長めのキスを要求されて二次会は終了した。
皆が帰っていくのをお見送りしてから、残っていた玲子ちゃんへ近づいた。
「受付やってくれてありがとう」
「どういたしまして。会費制だったのに、皆ご祝儀置いていってくれたよ。金額確かめて、皆にお礼言ってね」
「本当? それは皆の結婚式のときに、お返ししなければね」
全員バーを出てから、私と征士くんは結婚式を行ったホテルへ戻った。
ホテルはダブルベッドのスィートルームだ。
朝早くから役所へ行ったり、結婚式をしたり、披露宴をしたり、二次会までやったり……、私はすっかりくたびれていた。
「はあ~。結婚式がこんなに疲れるものなんて思わなかったわ」
「僕もさすがに疲れました。立て続けに色々やりましたしね」
ドレッサーに座りながらアップしてある髪のヘアピンを抜いていく。一体何本刺さっているのだろう。抜いても抜いてもなくならない。終いには征士くんに頼んで頭を見てもらった。抜き忘れでもあれば、髪を洗うときも、眠るときも痛そうだ。
気怠く髪の毛をぐしぐししていると、征士くんは苦笑いした。
「月乃さん、すごくお疲れでしょう。お風呂に入って、何もせず眠ってしまいましょう」
「え……。私は助かるけれど、征士くんはそれでいいの?」
「はい。明日から新婚旅行で海外ですからね。休んだ方がいいです」
疲れ果てていた私は、ありがたくその提案に乗った。
順番にお風呂へ入り、大きなベッドに横になる。
「お疲れ様です、月乃さん。今日のことは僕にとって忘れられない思い出になりました。素敵な十八歳の誕生日だったです」
「うん……。私も、幸せだったわ……」
征士くんに頭を撫でられながら、私達は深く眠った。
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