第20話

 まいは、山岡に会ってから、ほんの数十分で、高級クラブの中でさえなかなか頼んではもらえないお酒を頼まれてしまった。


山岡は、既に、まいの虜になってしまったのだった。


「今日、この後、付き合ってもらうことってできる?行きたいところあるんだけど」


「山岡さんならいいですよ。一応、店に確認してきますね」


まいは、確認するために、席を外した。山岡が個室で一人になったところで、タバコに火をつけた。そして、携帯に作っている女リストを開いた。画面には、収まりきらないほどの女の名前が

並んでいた。まいの名前は、一番上のナンバー1の場所に打ち込まれた。山岡がニヤリとする。


まいが帰ってくると、山岡は携帯をポケットの中にしまい込んだ。


「お待たせしました。良いそうです」


「それは良かった。連絡先、交換してもいい?」


「いいですよ」


 店を二人で出て、山岡はある店の前で止まった。それは、ジュエリー店だった。中に入ると、キラキラとしたゴミ一つない鏡のように綺麗な床の上に赤い絨緞が敷いてあった。ネックレスや、指輪、宝石などが、透明のケースに入れられて、静かに立たずんでいる。


「まいちゃん、これ、どう?」


山岡が指を指しているネックレスは、キラキラとしたダイヤモンドが付けられていた。


「凄く綺麗です」


「じゃあ、これを彼女に」


そう山岡はスタッフに言い、まいにネックレスをプレゼントした。


「私なんかにいいんですか?」


「まいちゃんだからだよ。綺麗な人は綺麗な物を身につけるべきだ」


まいは、山岡に微笑んだ。まいは、人の心を掴むのがとても早い。ある意味、能力だ。


全て、湊の思惑通りに進んでいた。

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