ダチュラ
みお
第1話
倉敷湊(くらしきみなと)は、あるホテルの一室へと向かっていた。膝下まである深緑のワンピースを着て、黒いパンプスを履き、手には小さいブランドのミニバックを持っている。
湊は、今日必ず必要な物がバックに入っていないような気がして、確認しようとする。ミニバックのチャックを開け、ポーチを取り出し、その中に入っている口紅型のピストルを目で見た。
「よし、忘れ物はない」
ポーチをミニバックの中にしまい、人混みの多い道へと出る。今日は平日なのでサラリーマンが多かった。湊は、忙しなく歩く人たちの中へ混ざり、感情を無にして歩いた。
太陽の光に反射してキラキラと光っている窓がたくさんあるホテルに湊は入って行った。壁が汚く卑猥な雰囲気を醸し出しているホテルとは違って、清潔で落ち着きのあるお金持ちが泊まりそうなホテルだった。このホテルは、すべての部屋が防音になっている。だから、どんなに部屋で音を立てても隣の部屋には聞こえない。
湊は、受付に行かず、すぐにエレベーターに乗り、9のボタンを押す。エレベーターから外が見えるように透明になっていて、街の景色が一望できる。天気が良いせいで、反射する光が眩しい。
黄色いランプが登って行き、9のところで点滅をする。
エレベーターのドアが開き、湊はエレベーターを出る。軽快な足取りで901を探す。901は角部屋だった。湊にとって、都合が良い部屋だ。
湊はドアをノックする。3秒たち、ドアが開く。身長は165センチくらいの目がギョロっとしている男が出迎えた。
「よく来てくださいました」
「お世話になります」
湊は笑顔で男に挨拶をした。中に入ると、男のものであろうスーツが壁に掛けられていた。男は、自分で持った来たジャージを着ていた。
「今日、あなたの予約が取れて良かった。全然予約が取れないで有名だから、取れた時は喜びました」
男は、目がくりくりとした155センチ、セミロングの湊をまじまじと見た。ワンピースから胸の谷間が見える。
「こんな可愛い子が来てくれるなんて、予想外でした」
男は、ニヤつきを隠せない。湊の容姿が気に入ったようだった。湊は、そんなことは気にも留めず、話した。
「ちょうど、キャンセルが入ったので承りました。これも何かのご縁ですね。痛みはどの辺でしょうか」
「肩甲骨の辺りがここ2年くらいずっと痛いのです。こんなものでも治りますかね?」
「任せてください。では、ベットにうつ伏せになったください」
男は何も疑わずにベットにうつ伏せになった。
「肩甲骨に塗るお薬があるので、それを取り出してもよろしいでしょうか」
「もちろんです。お願いします」
湊は、口紅型のピストルが入ったポーチをミニバックから取り出した。そのポーチを男の隣に置く。
「では、薬を塗っていきますね」
湊は、男の隣に行き、正座をした。ポーチを開け、薬を取るフリをして、あの口紅を取り出した。取り出した瞬間、湊は男に口紅を向けた。そして、口紅で男の後ろ首を撃った。
撃った瞬間、男は動かなくなった。首からは血が流れている。湊は男の脈を測る。脈はない。男は死んだのだった。
湊は、返り血を浴びた深緑のワンピースを脱いだ。ワンピースの下は、服を着ていた。淡い色の青のブラウスにグレーのスカート。ワンピースはミニバックの中に入っていたエコバックの中に放り込む。
男のバックをあさる。バックの中には、黒い拳銃が布に包まれていた。湊はニヤリと笑みを浮かべる。その拳銃で、同じ後ろ首を撃った。湊の指紋を丁寧に拭き取り、男に拳銃をしっかり握らせる。
エコバックとミニバックを持ち、901を出る。街の景色が見えるエレベーターに乗り、玄関がある一階まで降りる。そして、何事もなかったように湊はホテルを出た。
エコバックは、有料のゴミ袋に包み、途中のゴミ箱に捨てた。30分後のゴミ回収で回収され、跡形もなくなるだろう。
後日、その男がホテルの一室で自殺したと報道があった。湊の任務は成功したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます