ハッピーバースデー 雨

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 お誕生日は家族と一緒にピクニックに出掛ける。

 そう約束していたのに、当日を迎えてみたら。

 あいにくの雨模様だ。


 朝からずっと雨がしとしと、天気予報も今日はずっと雨だって言ってる。

 せっかくの記念日なのに、私の気分もお空と同じでどんよりだ。


 しかも、家の中までしとしと。


 冷たい水が天井からしたたり落ちてくる。


 私が住んでいるこの家は、とっても古くて、老朽化が激しいんだって。

 だから、雨が降ると、雨漏りしちゃう。


 しとしと。

 しとしと。


 とっても憂鬱な気分。


 お天気は、お昼になっても変わる気配がない。

 きっと、夜になっても、しとしとなんだろう。


 暗い気分でいた私の元に、お母さんがやってきた。


「お誕生日おめでとう~」


 明るい声でそう言ってくれる。


「ありがとう。でもピクニック行きたかったな」


 期待してた分だけ、落ち込む気分は大きい。


 計画を立てた時は、晴れるって言ってたのに、お天気は気まぐれだ。


「そういうと思って、お父さんが頑張ってくれました。お庭いこ」

「うん」


 一体何を頑張ったんだろう。

 雨の中、外に出たって、意味がない。


 草っぱらにレジャーシートを広げてお弁当を食べたり、明るいお日様の下でボール遊びをしたりできないなら、他の事してたって楽しくない。


 特に今日は特別な日なのに。


 でも、お庭に行ったときに、憂鬱な気分が吹き飛んでしまった。


 なぜなら、お庭にテントが建てられていたから。


 それ建てるの、結構大変なのに。


 前お出かけした時、建て方が分からなくて一時間くらい悩んでたよね。


 工具箱に工具をしまっていたお父さんが振り返る。


「お空の下でピクニックはできないけど、これで我慢してくれ。ごめんな」


 相変わらず空からは雨がしとしと。

 テントから水の粒がしたたり落ちてる。


 これでは理想のピクニックとはとても言えない。


 けど、少なくとも私の心の中は晴れ渡っていた。


「ありがとう、お父さん。お母さん」


 現実のお天気は買えられないけど、心の中の晴れ模様はガラっと変わってしまったようだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハッピーバースデー 雨 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ