第2話 守ってあげたい-2
本館一階端に新聞部の部室がある。昼休み、部員が集まって今日の清算をしていた。
「コピー代、紙代を差し引いて、このくらいになりますけど」立花
立花が電卓を見せた。中川は、眼鏡を動かしながらそれを覗き込んだ。
「まあまあ、よく儲かるね」中川
「ちょっと、儲け過ぎじゃないですか?」坪井
坪井が冷やかに言う。
「何を言う、坪井君。君は、わかっているのか?文化部の弱小部なんて、どんなに予算が少ないか。我々も、こんなことはしたくない。しかし、ちゃんとした新聞を出すためには、資金がないんだ。そのために、号外で資金を調達をしているんだ。そこんところを、ちゃんと自覚しないとだな、活動ができないんだよ」中川
中川が気取りながら言う台詞に、坪井は冷やかな視線を向けた。
「でも、部長。今年、まともな新聞はまだ出してませんよ」坪井
「へ、そうだっけ?」中川
「号外は、十回以上出しました、けど?」坪井
「号外も、必ず儲かるっていうわけでもないからな」中川
「それに、号外は市場リサーチでもあるわけだ」と新田が口を挟む。「読者のニーズを調べて、それを反映させる。これがマスメディアにおいて、一番大事な地道な仕事っていうことだ」新井
「でも、学校新聞の内容は決まってるはずでよ。行事予定と報告と、後は先生方にお願いした文と。それに、年三回発行も決まっているし、その費用は別でしょ」坪井
「いや、まぁ、坪井君。ジャーナリズムというのは、そういうものではないんだよ。絶えず記事を追い求め、社会に報告する。そして、社会の意識を向上させ、世論を形成する。これこそが、我々の目指すものじゃないか。なぁ、新田君」中川
「その通り!さすがは部長」新田
坪井は冷やかに二人を見ていた。
「そのうち、活動停止を言われても知らないわよ」坪井
「大丈夫だって、問題になるんなら、とっくに捕まってるって」中川
「でも、いくら何でも写真販売はヤバイんじゃない」坪井
「あれは、去年からやってるんだから」中川
「そう、それにヤバイのは、裏販売になってるから」新田
「何、売ってるのよ?!」坪井
「それは、まぁ、いいじゃないか」中川
「それは、それとして、部長。例の計画はどうなってます?」新田
「あれか」中川
「何よ、また変なこと考えてるんでしょ」坪井
「違うよ、写真集の販売だよ」新田
「写真集?」坪井
「そう、野球部のスターを中心に、二十枚組で」新田
「そんなの高くつくでしょ?」坪井
「モノクロは俺が自分で焼くから。カラーだけ外注で。それに予約販売だから、無駄もない」中川
「でもよ、中川。やっぱり、美女の写真集がいいな」新田
「誰がいい?」中川
「誰って、言ったって、ピンじゃ無理だろう。やっぱり、複数で」新田
「いやいや、なかなか、可愛い娘もいるから。ほら、あの緑川由美子ちゃんとか」中川
「あの娘はアメリカへ行ったんだろ」新田
「じゃあ、姉貴の、緑川由理子」中川
「いいね、でも、テニス部の野上麗子とか、葵貴美」新田
「三年なら、あと三島百合」中川
「二年なら、D組の松原深幸、E組の古木まゆみ、なんてのもいいよ」新田
「いいねぇ、それ。あと、イチローの彼女が可愛いんだよ。ピンで写真集は無理だろうけど」中川
「サンディもいいよ。外人は発育がいいから」新田
調子に乗って新田は続けた。
「由起子先生はどう?」新田
「いいねぇいいねぇ」中川
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます