絶対に付き合わない百合

湯前智絵

絶対に付き合わないバンギャ百合

 私と立花りっかは高校からの腐れ縁だ。私たちはヴィジュアル系バンドの追っかけをしていて、いつも2人で行動している。

 1人でライブに行くことはないから、会場で会うバンギャ仲間からは付き合っていると勘違いされることも多い。

 確かに立花はキレイだし、なんなら私は超絶可愛いし、私たちをカップルにしたい気持ちは分からなくもない。

 仲が良いことは認めるけど、好きなタイプがまるでちがう。

「私、てのひらサイズのおっぱいがいい」「私はもっとおっぱい大きい子の方が好き」

 ちなみに顔もお互い好みじゃない。と、はっきり言えるくらいには仲が良い。

 でも、だから付き合うことは絶対ない。

 お似合いだと思うけどな~とか言われても、親友の関係が気に入っているし、正直、立花とキスはできてもそれ以上は無理。ほんと無理。親友のオンナの顔とか見たくなくない?


 でも、あまりに言われるから、2人で付き合えるかどうか真剣に考えてみた。

「バンドマンはさ、ステージ上でキスしたりするじゃん。それを見てファンっていうかウチらもキャーキャー喜んでさ、ナマモノの二次創作が生まれたりするじゃん」

「そうね」

「で、それを自分たちで置き換えてみたわけですよ」

「はあ。……はあ?」

「私と立花がそーゆーことしてる創作物を見ちゃったら、大好きなハーゲンダッツも砂の味しかしないかもしれない」

「…………」

「いや、露骨に何言ってんだオマエって顔するのやめてくれない? 立花も想像してみてよ。私とイチャコラしてるマンガとかを見たときのこと」

 立花は目線を上に泳がせてから淡々と言う。

「私だったら3日寝込む」

「もうちょっと考えてくれてもよくない!?」

 アリって思われても困るけど!そう声を荒げる私を見て立花が笑う。

 真っ赤なリップを塗った形のいい唇が大きく開く。

 その姿を見てふと思う。今度の誕生日には欲しがってたグロスをあげよう。

 こんなかんじで騒いでるのが最高に楽しいんで、私たちは絶対に付き合ったりしません。

 ……いや、フリとかじゃないから!

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