第6話 ここはカットで
『このレイ様が来たからには安心したまえ』
俺の動きは、雑誌コンテスト出の俳優、カーター
けど、成海さんはどっちかって言うと……。
「プリンスレンジャーがんばれー!」
特設ステージの周りには、夕方にもかかわらず園内の客が集まってきてくれたようで、まずまずの賑わい。ちょっと大きい子たちは恥ずかしいのか、遠巻きに観ていたりする。高校生の俺からしたら、前にいるこの子たちと君たちは一緒に思えるが、気持ちはわからんでもない。なんたって俺はスカ男だからな。だからこんな恥ずかしいバイトを、自から受けたわけじゃないってことは、無論、説明しなくても解るだろう。
俺の叔父さんは、アミューズメント施設を運営する会社に勤めていて、ここの遊園地もその一つ。あまり事情は話されていないが、出演者が急遽キャンセルになったらしい。そこで体格や体力、出演頻度などを考慮し、俺に白羽の矢が刺さったとかで。
まぁそこは事実かどうかは怪しいが、俺的にはどうでもいい。ただ確実に言えるのは、母さんが勝手に俺を売っていたっていうこと。
約一ヶ月前。授業中に届いた、母さんからのショートメールが、ことの発端だ。
俺はまたドレッシングでも買わされるのかと思いつつ、黒板に向かう教師の目を盗んで画面をタップ。
「あんた学校終わった足で
とだけを送ってきた。「叔父ちゃんナウ」がうざかった。
色々正さなければならんことがあるなと思って、授業終了後すぐ番号を押したんだが、母さんは折り返しの電話には出ず。だから叔父さんの番号も知らねぇ俺は、強制的に行く選択肢しかなかったんだ。しかも時間すらわからなかったから、走って行ったんだぜ。当然その原動力は、頭ん中の「くっそばばあ」のみ。
でもまさか、戦隊モノのステージに立たされるとは思いもしなかったよな。その時の俺の気持ちは、一体誰が理解してくれるんだ? てか、そもそもまず全身スーツに対しての抵抗が、まじ半端なかったし。
だが、たかが高校生の俺。どうにもならない大人の事情に屈するのは容易く、出演があっさり決まった。叔父さんも、まじ悪い人だと思う。
俺はテントの中で「顔バレしないんだから……」と、自分に暗示をかけるように繰り返し言い聞かせたが、初舞台は不様な醜態を晒して終了。マスクの下は涙目で、胸元を飾る金の薔薇刺繍の下は棘だらけだった。
高校生にもなって、バイトの失敗くらいで泣いたのは俺くらいだろう。そう思いながらも、最後まで残ってくれた三人の有り難いお客様に向かって『このレイ様と写真を撮りたいお友達は、五百円を持って並ぼう』と、やや客を意識したカーターのイケボを通し、俺は金をせびった。それを聞いたお
そして気付いてしまう。これが黒歴史なんだということを。
だがそんなズタボロの俺を、彼女は見事に救ってくれたんだ。
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