シンニンゲン

Leo

Prologue

夏。ジリジリと日差しが差し込む日に、僕は産まれた。空という名前はそこからとったらしい。でも産まれてこの方、僕は両親の顔というものをほとんど見ていない。というか、覚えていないのだ。

 今の母親から聞いた話だが、僕は産まれて間もない頃からいわゆる育児放棄というやつに晒されていて、今の母親の元へ預けられたという。実母ではないけれど、僕はそれほど苦労はしていなかった。あったかくてとても柔らかい家族のもとで暮らせて本当に幸せだ。ちょっと困った事といえば、両親とも性格が僕と似通っていないところくらい。母も父もとても優しくて頭が良くて、運動神経が抜群で完璧なひとだった。2人とも優しいから

「きっとあなたにもあなただけにしかできないことがあるはずだから」

と言って慰めてくれるけど、それと真逆の僕はやっぱり劣等感を感じられずにはいられなかった。――とはいっても僕は本当に幸せな生活を送っていた。

『あの日』、僕のこの生活は突然終わりを告げた。

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