全人類エルフ化!? ~僕は絶対に美少女になりたくないので、対ゾンビ戦術で無双します
松葉たけのこ
プロローグ
第0話 エルフ相手のサバイバル。
エルフとは、男の
古くはゲルマン神話……北ヨーロッパの民間伝承から登場し、J・R・R・トールキンによって成型された空想上の妖精。
空想であるからにして、その存在は理想である。
艶めき流れる金色の髪、目の覚めるような青い瞳。
端的に言って、最高級の美少女。
考えてもみろ。そんな存在が現実にいたら、どうなるか。
全人類の男たちが、その前にひれ伏して靴を舐めるに違いない。
プラトン先生だって、多分猛烈にペロペロだ。
そんな目標には決してなり得ない理想を心に抱いていた、あの頃。
僕はあまりにも、脳無しであった。
「
現在、サバイバル部の部室(セーフルーム)にて籠城中。
閉め切った扉、そして机を有刺鉄線で縛ったバリケードの向こうには、空想にして理想に過ぎなかったはずの存在が群れを作っていた。
金髪碧眼のエルフ。忌々しい妖精ども。
「そうだよ、譲二くん。もう諦めたまえ」
「あの女の子のことなんて、忘れちまえよ。ジョー」
「なー、エルフになるのは楽しいぞぉ?」
日本の何処かで新種のウイルスが発生した。
ウイルスは粘膜が触れ合うことで感染し、うつれば例外なくエルフの美少女に変態する。
そう。それが男であってもだ。
「げえ……ろ過装置の水、砂っぽい味する」
僕は木炭と砂利の入った、ペットボトルを睨む。
いやいや、飲める水があるだけでも有難いだろうに。
水は生命線だ。感謝こそすれ、この神とも呼ぶべきろ過装置を睨むなんて。
不敬だ。不敬罪だ。処刑! ……なんて、一人で盛り上がっててもしょうがないか。
賢者モードになってしまったので、暇つぶしに映画でも見よう。
「今日は、ナイト・オブ・ザ・リビングデッドの気分!」
まあ、これでこの映画を見るのも24回目なんだけど。
カーテンの閉まった真っ暗な室内で、旧型のブラウン管テレビを、ボロいソファーに座り、食い入るように見つめる。
僕が籠城を始めてから、すでに2週間が過ぎようとしていた。
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