魔王復活編 最終章
第26話 予兆
二人を返し、フリルは一人、とある場所へと向かっていた。
「さてと、この部屋か」
それは、召喚された勇者らの部屋だった。
軽くノックをし、フリルが扉を開ける。
中にいたのは四人だが、リーダー格のユウタだけがフリルの方を見た。
「お、お、おーーー!!!! もしかしてあんたが、その、あれなのか!!? やべ、焦りすぎて言葉が出ねえ!!」
「いかにも、俺がフリルだよ」
「そうだよ! フリルさんだよ! この前は本当にあんたの武器に助けられたんだ!!」
騒ぎ立てるユウタを見て、他の三人もようやく注意を向ける。
「あの、今わたくし、ぐっすりと寝てたんですけど? 女神の睡眠を妨げるなんて、どういうつもりかしら?! どうしてくれるの!!」
「すまないね。連絡もせずに押しかけて」
「てめえイザベラ!! なにフリルさんに謝らせてんだよ!!」
振りかぶった拳が、イザベラの頭部を直撃する。
「おぶっ!!」
「あとお前らも! この人が俺たちを救ってくれたあの魔導具の開発者、フリルさんだぞ! 挨拶の一つくらいしろ!!」
騒ぎ立てるユウタに、軽く挨拶する三人。それを若干の苦笑いで眺めていた。
「あなたがこの杖の作者なのですね! これはありがたくいただいておきます!」
「ま、まぁ・・・使うこともなかったゴミだし、有効活用してくれる人が見つかってよかったよ。もし他にも欲しいものがあったらどれでも好きに持っていっていいからね」
「なるほど!! では、これよりすごいのを軽く200本程度と、それを全て入れられる小さいマジックバックをお願いしたい!! 私はそこの男にお金をケチられ、いい杖が買えずとても困っていたのですよ!」
イザベラといがみ合っているユウタをビシッと指刺し、目を輝かせながら言う。
「で、できれば、私にもその、レイピアを6000本ほど・・・作って欲しいネ」
リンは若干冗談のような、本気のような、よく読めない顔でそういう。
「まぁ、そのくらいなら明日にでも届けるよ」
「は、はは……ご冗談を……」
ユウタが乾いた笑いをこぼす。
「じゃあとりあえず、マジックバックだけ渡しとくね。杖と剣は……やっぱり素材足りなかった。作れた分入れておいたから、確認しておいて」
「……え……は、はい……」
「やっと……終わったぁぁ!!」
「少しはゆっくりできそうですね! フリルさん!」
ルーのことも解決し、家に帰ったフリルは大きく背伸びをしていた。
「あぁ! これからゆっくり農業でもしようかと思う。あと子供達にも勉強を教えたり、いろいろやっていきたいなぁ」
フリルは一瞬で顔を険しくした。
「フリルさん……?」
「触るな!」
急な変わりように、ルイスはビクッと震える。
「今は触らないでくれ。ルイスを怪我させてしまう」
「どうしたんですか……?」
感情が抑えられない様子のフリル。
それも仕方ないことだった。フリルは慎重な性格だ。子供達に危険が及ばないよう、子供達が行き来する村の周辺には、何重にも障壁を張っていた。
その一枚一枚が、世界最強の攻撃力を誇る龍王ユグドですら全力を出しても破るのに苦労するレベルである。
「ハユが何者かにさらわれた」
その障壁を掻い潜り、子供を攫ったものがいたのだ。
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