神と旅と少年と

秋猫シュガー

第1話・失った少年

家族を失くした。

失くしたと言うよりは捨てられたの方が正しく、今は売られて空き地と化しているいる家の前にいる。

住む場所も無くお金も無い。

いつかこうなるだろうとは思っていたが、いざなってみると何か対策を取っておいた方が良かったと後悔する。

ここに立っていても、何も始まらないので、町をぶらぶらと歩く事にした。

俺が育ったこの町、 神影かみかげ町は星京せいけい国の端にある。

この街は農業の仕事が多く、若者が他の町に行ってしまい過疎化が始まっている。

この街には思い入れはあるが、ずっとここに居続けたいとは思わない。

「さて、どうしたものか」

ぶらぶらと歩いていると国と国の境界線を表している壁の前までやってきた。

隣国の陽京ようけい国とは一つの国になっても良いのではないかと思われるほど、仲が良く、一度も戦争をしていない。しかし、領土位ははっきりさせた方が良いのではないかという話になり、国の境界線には、災害などでも壊れにくい素材で、遠くからでも目立つ高い壁が作られた。

壁の下にはトンネルが空いていて、隣国に行くのは簡単な検問と機械に国から支給されるパスカードを通すだけである。

久しぶりにトンネルに近づいて行くと、壁の壮大さに驚かされる。

これにはいつ見ても慣れない気がする。

トンネル付近には検問所があり暇そうにあくびをしている警備員に持ち物検索をされた。(まあ、何も持っていないのだが。)

パスカードを機械に通し、トンネルに入る。

トンネルは数十メートルあり外灯が中を照らしている。

いつ見てもこんなに分厚く作る必要は無かったと思う。

けれども、俺はこのトンネルを通るのは好きだった。

などと思っていると、隣国の華神かがみ町に出た。

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