そして─
「気付いていなかったのかい?高位の貴族の子息達が君に、何かと用事を頼んでいただろう?あれは君に好意を持っているからなんだよ?」
その言葉にシオン驚いた。
「でも、私はからかわれてばかり何ですけど……」
「男はね、好きな子の気を引きたくてバカな事をする生き物なんだよ?」
「本当なんでしょうか?」
首を傾げるシオンであった。
酷い偏見である。つまりは小学生レベルなのだ。大丈夫か?この国は………
「いけない!もうこんな時間!?」
取り敢えずシオンは時間が来たので、朝の社の掃除を終え、普段の仕事に戻っていった。王子と王女もシオンを自分の侍女にすべく国王(父親)の元へと向かった。
コンコンッ!
「入れ!」
国王の執務室へ入ると珍しく王妃(母親)が一緒にいた。
「失礼致します。父上、お話ししたい事が………あれ?母上?」
「あら?チチスキにミルク、珍しい所で会うわね~」
チチスキ王子とミルク王女の母親の王妃は、貴族としては珍しい、のんびりとした性格の人であり、自分から派閥を作るのではなく周りが護ってあげたいと思うように動かす人である。逆に父親である国王は、政策に私情を入れずしっかりとした政策を取る賢王と名高い名君である。
(まぁ、巨乳好きで妻である王妃を溺愛している所は公然の秘密である。そんな両親を見て育った為、王子はちっぱい好きになったのだが……まぁ、どうでもいいことである)
「珍しいな?チチスキとミルクが一緒になどとは……ふむ、久々に家族談義でもするか」
執務の筆を止め、補佐官を部屋から出るようにいった。
「お前達が一緒にくるという事は他に聞かれたくない事だろう?人払いはしたぞ」
父親の先読みに少し驚く二人だったが、本題に入った。
「父上!実は結婚したい女性が出来まして、その御許可を………ぐぼっ!?」
ミルク姫が兄の腹へボディーブローを喰らわせたのだ!
「お兄様?バカな話は死んでからしてくださいな?」
悶える兄を放って置いてミルク姫は本題へ入った。
「実は重大な案件が発生致しましたのでご報告したいのです」
「「重大な案件?」」
ミルク姫の真剣な雰囲気に国王と王妃は気を引き締めた。そして城の裏庭の寂れた社に神様が復活し、顕現したことを話した。
「バカな!?それは本当なのか!!!?」
国王もその重要性に驚きの声を放った。
「ぐっ、父上!復活した冥土神様の事は知らなかったのですか?」
国王は少し顎に手を乗せて話した。
「いや、実は代々国王を受け継ぐ時に渡される古い書物があってな?その書物に、この城の何処かに上級の神様が眠っていると書かれていたのを覚えている。私の父………お前達のお祖父さんは1度、城の大掃除だといって、この社を探させた事があったが、見つけることが出来なかったと言っていた」
「そんなバカな!確かに裏庭とはいえ、そんなに見付けにくい場所ではありませんでしたよ?」
そこに母親である王妃が口を挟んだ。
「もしかして、封印されていたんでしょうか?」
王子は母の言葉にガクッとした。先程、神様が封印されていたと言ったばかりだが、次の言葉に思い直した。
「あ、その場所自体に見つからないような結界があって、封印されていたんじゃないかしら?でもそのシオンって女の子が、知らず知らずの内に封印を解除したので、チチスキ達にも見える様になったのではないかしら?」
!?
なるほど!それなら納得がいくぞ!?
王妃の推測に一同が頷いた。
「チチスキ、すぐにその場所へ案内せよ!」
国王として、王族として守護神になり得る神様にお目通りしとかなければならなかった。
「はっ!それと私の先程の話ですが………」
「お兄様!まだ諦めていなかったのですか!?」
また二人で喧嘩を始めるが、国王はそれをスルーして尋ねた。
「シオンという子爵家の侍女だったかな?」
「ちょっと違います。子爵家の長女である令嬢が、マナーなど学びに城の侍女をしているんだ」
まぁ、微妙な言い回しであるがチチスキは続けた。
「その【私の】シオンは冥土神様の加護を頂いております。立場は子爵家ですが、王族と釣り合うかと思います!」
「ほう?確かにそれが本当なら王族と釣り合うな。後は1度見てみないと許可は出せんがな?」
国王はニヤニヤしながら王子を見た。
『ちっ!嫌な顔しやがって!?』
チチスキは内心で悪態を付いた。
そして─
『おや?また来たのかのぅ?』
冥土神の住む寂れた社にきた国王一家は、冥土神に平伏した。
「何度も来てしまい申し訳ありません。ただ我が父、この国の国王が是非とも復活されました冥土神様にお目通ししたいとお連れしました」
頭を下げながら父親を紹介した。
『おお!国王自らご足労を掛けてすまぬな!我もまだ力が足りぬのじゃ』
冥土神様は少し嬉しそうだ。
「お初に御目にかかります」
国王は丁寧に自己紹介をした。何故なら、神格の持つ神を蔑ろにすれば国が衰退し滅びると云われているからだ。逆に神を奉り、神様の祝福を頂く事が出来れば、国が潤い発展すると云われている。
国益をしっかりと認識している国王なら、頭を下げるのに躊躇はない。
『ほう?それではここに立派な宮殿を建ててくれると申すか?』
「はい!死者の魂を導く冥土神様に、寂れた社は似つかわしくございません」
冥土神は少し考えながら国王に言った。
『気持ちは受け取ろう。ただこの場所はこのままにしておいて欲しいのじゃ』
「何故でございますか!?』
予想外な回答に焦る国王
『ここは我を目覚めさせてくれたシオンが、慣れない日曜大工で直してくれた所じゃ。このままにしておいて欲しいのじゃ』
ここにシオンと冥土神との信頼関係が感じ取れたのだった。
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