趣味は人それぞれ………
ミルク姫は兄であるチチスキ・バストに詰め寄った。
「彼女の事はトップシークレットなんだ。他の者には教えられない」
ミルク姫は兄の言葉に納得がいかず反論した。
「王族である私にも教えられないとはどういうことです!お兄様が教えて頂けないのなら大々的に探しますわよ!」
意外にも気の強いミルク姫にため息を付いた。
「そんな事をしてみろ。2度と会えなくなるぞ?」
ミルク姫はぐぬぬぬっとなお反論した。
「それではお兄様も会えなくなるではありませんか!それでも良いのですか?」
半ば脅迫にも近い言い方だったが、チチスキには好都合であった。ちっぱいはちっぱいだからこそ良いのだ!巨乳になど変身させてなるものか!?
妹であるミルク姫が騒いで巨乳シオンを探せば、変身を自粛して姿を現さないだろうと予測していた。
「ああ、私も彼女に会えなくなるのは好都合だからな。やってみると良い」
にこやかに微笑む王子様スマイルをして妹のミルク姫をあしらった。
「それでは仕方がありません。この手だけは使いたくありませんでしたが………」
ミルク姫は兄をみていった。
「お兄様には最近、お気に入りの侍女がいるとか?」
ピキッ!?
この発言にチチスキ王子は固まった。
『なんだと!?どうしてバレた!?誰が密告したのだ!』
表情は冷静に保っていたが内心は大荒れである。ってか普通気付くよね?
一国の王子が城の中でコソコソと幼児体型の侍女をストーカーしていれば、誰でも気付くよ!
ただでさえ王子という立場であれば、廊下を歩くだけで注目されるからね?
普段はハイスペックな良くある完璧王子であるが、ちっぱいが絡むと突然残念な王子に早変わりしてしまうのだ。
「その侍女にお暇を出そうか………」
ミルク姫は最後までいう前に王子に両肩を掴まれた。
「よし、たまには二人でお茶でもどうだい?」
(※二人で内緒の話をしよう)
「まぁ!嬉しいですわ♪では私の部屋へ行きましょう!」
(※邪魔の入らない場所へ行きましょう)
こうして、一発逆転でミルク姫に軍配が上がりシオンの事を話す事になったのであった。
「でっ?あの素敵なお姉様はどこの誰なのですか?」
チチスキ王子は苦虫を噛んだ顔で答えた。
「あの女性がお前の話していた私の気にしている侍女だ………」
!?
「お兄様、趣味が変わった……いえ、お兄様の気にしている侍女はシオン・チー・パインバレー子爵令嬢ではありませんでしたか?どうみても別人なのですが?」
どうしてお前がフルネームまで知っているんだよ!?と突っ込みたかったが、堪える王子。
「あれは紛れもなくシオンだ。実は─」
王子はここ最近のシオンの出来事を語った。それはもう綿密に、1日中側で付いて様子を知っているかのようにである。
ぶるぶる………
「にわかに信じられませんわね」
「別に信じなくても構わん。だが、お前の気になる人物には会えないだろうな」
取り敢えずシオンが変身する所をみないことには何とも言えないので、その日は解散となった。
そして次の日から王子と王女のシオンに対するストーカーが始まったのだった。
いや?王子のストーカーに王女が加わったというべきか。
そうとは知らずシオンは早朝に、呑気に鼻歌を歌いながら掃除をしていた。
「フンフンフン♪良いことした後は気持ちがいいなぁ~」
そんな事を呟きながら冥土神はシオンを付けている者に気付き、シオンに言うべきかどうか迷っていた。
冥土神は城の中での事なら大抵の事はわかるのだ。ミルク姫がシオンの後を付けているので、先日のお礼を言いたいのかな?と思っていた。王女ともなれば人前で気軽に頭を下げることもできんじゃろうと考え、お礼を言うタイミングを伺っているのかな~と勘違いしていた。
「うーーーん!」
冥土神様の社の側に、地面に埋まっている石を退けようと頑張るが意外と大きく、掘り出せないでいた。
「そうだ!変身すれば力も強くなるよね!」
ぼっーーーーん!
キラキラッ!!!
「よし、やるぞ~!」
そして大人になったシオンはテキパキと掃除を続けるのだった。
その瞬間を見ていた王子と王女は奇しくも、1日でシオンの正体を見てしまった。ああ、なんてご都合主義なのでしょうか!?
「お、お兄様!?」
ミルク姫は見たものが信じられなく、口をパクパクさせて、シオンを指差しながら王子を見た。
「だから言っただろう?」
チチスキ王子は静かに頷いた。
『御主達、そろそろ出てこんか?』
!?
社から銀髪のゴスロリ少女が手招きしていた。
「えっ!メイド神様?」
まさか人がいるとは思わずびっくりして振り向くと…………
「…………だれ?」
ズコッ!!!?
自国の王子の顔ぐらい覚えておけよ!
気を取り直して─
「ああ!先日のお嬢様!」
ミルク姫は優雅にカテーシーをして挨拶をした。
「先日は助けて頂きありがとうございました。私はこの国の第一王女ミルク・バストです」
「おおおっ!お姫様!?」
気の小さいシオンは条件反射で地面に土下座した。
「止めて下さい!私はお礼を言いたいだけなのです!お姉様!」
「お姉様?」
キョロキョロしたが、ここにいるのは二人を除いてメイド神様と私だけ………私かーーー!?
シオンは変身している事を忘れていた。
「ああ、気にしなくていいぞ?シオンが変身したのを知っているからな!」
何だってーーーーー!!!!!
「あの………」
「大丈夫だ。君の事は私達兄妹しか知らないから」
シオンが言う前にチチスキ王子は答えた。シオンはホッとしたがある言葉に反応した。
『兄妹』
プルプルと震えながら指を差すと、ミルク姫が答えた。
「ええ、私の兄にしてこの国の第一王子にして王太子であるチチスキ・バストですわ♪」
シオンは目を回して気絶しそうになった。
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