第133話、俺たちに出来ること。



ラウド王子が泣いている中、アルトとボロックと話をして、一旦戻ってくる事を告げた。


そして俺は転移の魔法でトカレフ将軍の元に行き、

事の結末を話した。


「そうでしたか...。王はやっぱり...。

こればかりは仕方がありません。

少々時間をくださいませんか?」


「あぁ...。構わない...。」


5分もしないうちにトカレフ将軍は戻ってきた。


「隊長達に事の結末を話してきて、明日には帝国へ帰り仕度をして戻らせます。」


「わかった...。」


「コウ殿...。そんな顔をしないでください。

貴殿方は帝国を救った恩人なのです。

貴方にそんな顔されたら私たちはどんな顔して帝国に戻ればいいのか...。」


「そうだな...。すまない。」


「私を一先ず帝国に送って頂けませんか?」


「あぁ...。そのつもりで俺もトカレフ将軍の元に来たんだ。」


「では、行きましょう。」


「あぁ...。」


俺は魔法で再び帝国の王の間に転移した。

そこには、シェイクナー王にしがみついて泣いているラウド王子の姿があった。


「ラウド王子。このトカレフ、ただいま戻りました。留守にしていてすいませんでした。」


「うぅぅ...。トカレフ...。とと様が...。とと様が...。」


「ラウド王子、お気を確かに。このトカレフいつまでも側に居ますゆえ。」


「うぅぅ...。」


俺はラウド王子の前に行き、


「ラウド王子...。シェイクナー王を救えずにすまなかった。」


「...そなたたちは?」


ラウド王子は涙を拭い俺たちの方を向いた。


「私の名前はコウ・タカサキ。Sランク冒険者です。」

「私は、アルト・フォン・レオンハート。レオンハート国の第三王子です。」

「私はその従者のボロックです。」


俺たちが名乗ると、


「私はこの帝国の王子、ラウドです。

この度は我が帝国の問題を解決していただきありがとうございます。」


父親が目の前で死んだのに、凛とした顔に戻り頭を下げた。

さっきまで泣いていた10歳の子供が堂々としている。


コレが王なる資質か...。


俺はラウド王子のその姿に感銘を受けた。


「とと様...。いや、シェイクナー王が変わったのは気づいていました。変わり始めた時にこの短剣を私に授けてくれました。」


さっきのアズライールの侵入を拒んだ短剣か...。


「この短剣は、破魔の短剣。

きっとシェイクナー王はこの事を予見していたのでしょうね...。

この短剣を肌身離さず持っている様に言われました。

先程、黒い塊が襲ってきたとき守ってくれたこの短剣はシェイクナー王の思いだったんだと思います。」


「そうですね...。ラウド王子...。

私を恨んでいますか?」


俺はラウド王子に聞いた。


「いいえ...。

と言えば嘘になりますか...。

すいません。

頭では分かっているんですが、気持ちの整理がまだついていないもので...。

しかし、この帝国を救って頂いたのはわかります。ありがとうございます。

僕に、もっと力があれば...。

ただただ、今は悔しいです...。」


「ラウド王子...。」


俺はそれ以上ラウド王子に話すことは出来なかった。

沈黙の中、口を開いたのはアルトだった。


「ラウド王子。今はシェイクナー王を弔いましょう。国を上げて。

シェイクナー王のお陰でこの帝国は救われたのです。

これから帝国の兵士達が帰還してきます。

帝国の兵士達が帰ってきてから葬式とラウド王子が帝国の王として宣言するのがよろしいかと...。

私も友好国レオンハート国の第三王子として参加して助力します。」


「アルト殿...。助力感謝する...。

せめて1日、今日1日は父上と一緒に居させてくれないか...?」


それを断る権利はもちろん俺たちにはない。

気の済むまで一緒に居させてあげたいと思うのは一同感じていた。


「もちろん...。私たちは日を改めて正式に近々来ますので。」


「分かりました。お待ちしております。」


そして、アルトはトカレフ将軍の側に行き、


「トカレフ将軍...。後は、お願いしても宜しいか?」


「はい...。後はお任せください...。」


「兵士達が帰還する日に合わせてこちらにまた寄らせてもらいます。」


「はい...。分かりました...。」


「それでは。」


アルトが話をしめて、俺の転移魔法を使ってスノーフリーデンヘ帰還した。

スノーフリーデンに着いた俺たちは、エジルの館に行き帝国での事をみんなに伝えた。


誰一人言葉も発せず真剣に聞いていた。

そして、そのまま解散をしてそれぞれの寝床についた。


「マスター...。大丈夫ですか?」


「あぁ...。

でも、ラウド王子の事を考えると辛いな...。

大切な人を俺は奪ってしまった。」


「それはマスターのせいでは無いですよ。」


「分かっている。分かっているんだけど...。」


「マスター。大勢の命を救ったんですよ。

マスターは言ってたじゃないですか?

命は平等だ。...と。

私もそう思います。

それにシェイクナー王は自分の死期をわかってたんじゃないんですか?

だからラウド王子に破魔の短剣を渡したんじゃないか?と私はそう思います。」


「そうだよな...。

ヴォイス...。ありがとう。」


「今日はもう寝ましょう。私が側に居ますから。」


「あぁ...。」


俺はヴォイスに抱かれてそのまま眠りに落ちた。



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