第125話、アルトの憧れ。
「アルト。ゲームをしないか?」
「ゲーム?こんなバタバタしているときに?」
アルトは少し困惑気味な顔して俺に聞いてくる。
「あぁ。今足りないのは食料と物資だろう?」
「うん。」
「それをどっちが多く持ってこれるかっていうゲームだ。こういうのはモチベーションが大事じゃん。ただ言われてやるよりも競争した方が楽しいし燃えるだろう?」
「いいねぇ...。勝ったらどうしよっか?」
「うーん。相手言うことを何でも1つ叶えるっていうのは?」
「...賛成。それ...良いね。」
アルトが今までに無いくらい悪い顔でにやけている。
俺は何か間違ったのかもしれない...。
っても負ける気は毛頭ないが...。
「時間は...。帝国兵が班ごとに分かれるまで、あの規模なら1時間半ってところか。」
「1時間半ね。了解。」
「っていうかアルトは収納の魔法って覚えてたっけ?覚えてないとキツいと思うけど。」
「とっくに覚えているよ。ただコウくんのオート収納が便利で僕のは使い所がなかったけど。」
「そっか...。なら安心だ。じゃあ、始めよっか。」
「うん。いつでもどうぞ。」
アルトの余裕な姿が不気味だ。
いつもなら少したどたどしいのに...。
俺はヴォイスを自分の中にアスタ、リスクを聖剣に戻した。
「よし。始めるぞ!よーい。ドン!」
俺は自分の合図と共に空中に高く飛んで、モンスター察知の魔法を使った。
さすがにここら辺には大型モンスターの気配はない。だからといって小さなモンスターを
相手にしてたら時間がなくなる...。
俺は索的範囲を拡大した。
「居た!ワイバーンの群れ!けど、大分遠いな...。」
(そうですね...。最速で飛ばしてギリギリって所ですかね...。)
「まぁ、他に居ないから仕方ないか...。
ってアルトは何をしているんだ?」
(魔法の詠唱をしているみたいですね。今まで見たことのない術式です。)
「新しい魔法か...。見たいが、時間が惜しい。みんな行くぞ!!」
(はい!)(うん!)(なの...!)
俺はワイバーンの群れの所に向かった。
「コウくんは行ったか...。コウくんが帰ってきたとき驚く顔が楽しみだ。フフフ。」
アルトはコウの驚いた顔を想像してにやけていた。
「アルト様は本当にコウ様の事が好きなんですね。ちょっと嫉妬しちゃいます...。」
「うん。僕の一番の親友で理解者だもん。
でも、この勝負は負けないけどね。クラレ。後どれくらいでこの辺の魔物を把握できる?」
「後、もう少しですけど...。
この辺は大型の魔物なんか居ないんですけど、いいんですか?」
クラレントは不思議そうにアルトに聞いてくる。
「いいの、いいの。
コウくんは分かってないんだから。
食料だけだったら僕は負けてたかもしれないけれど、物資もってなったら負けないよ。」
「それはなぜですか?」
「この辺は寒いじゃない?
だから毛布の代わりになるような魔物の毛皮とかも大事になってくるわけなんだ。
寝るときに寒かったら凍え死んじゃうからね。」
「なるほど。そういう事でしたか。」
「コウくんはおそろくワイバーン辺りを狩りに行ったんだと思うけど、
それだけでは足りないよね。色々と。
だからこの勝負は僕の勝ちだね。」
「さすがはアルト様。
この辺り一帯の魔物を全て把握しました。
今、情報を送ります。」
「ありがとう。よし。新しい魔法を放つか...。
....天から降り注ぐ刃の雨。
風よ吹き荒れろ。氷よ降り注げ。我が血肉を糧にして。
ブラッドレイ。」
アルトから真上に放たれた魔法は何千という氷の刃に変わり、拡散して放たれた。
そして、クラレに送られた位置にいる全ての魔物の首を切り落としたのだった。
「あの...。アルト様...?
非常に言いにくいんですけど...。」
「なに?言いたいことがあるなら言いなよ。」
「何ですか?その物騒な詠唱は...。
我が血肉とか...、ブラッドレイ...とか。
なんか聞いている方が恥ずかしいんですけど。」
「い、いや。なに。雰囲気さ。うん。
格好いいじゃん。なんかそういうの。」
「ひょっとしてコウ様の影響では...?」
クラレントはジト目でアルトを見る。
「ま、魔法は雰囲気とイメージが大事なんだよ。言葉にはさほど意味はなさないし。
うん。」
「へぇ....。」
「...。ほ、本当だよ。
べべべ、別にコウくんが必殺技のネーミングしてたのを見て、
格好いいな~とか僕もこうしようかな~とか思った訳じゃないからね!!」
「へぇ~...。本当は?」
「...すいません。
めっちゃ格好いいなと憧れてました。
これで僕もコウくんに近づけたかなと思いました。本当、すいません。」
「私は別にいいんですけど。
多分、リアやラテの前でやると少しひかれると思うんで自重してください。」
「はい...。格好いいと思うんだけどな...。」
「けれど、魔物を全滅させたのは流石です。
詠唱と魔法名はともかく。」
「うう...。あんまりいじめないでよ。
それじゃあ討伐した魔物を回収収納するから解体お願いね。」
「はい。わかりました。」
「
アルトが魔法を唱えると討伐された魔物が次々と飛んできた。
その途中にクラレントが、解体魔法で綺麗に解体してアルトに収納されていった。
(マスター!ヤバイです!)
ヴォイスが慌てた様子で俺に言う。
「どうしたんだ?そんなに慌てて。」
(スノーフリーデン一帯の全ての魔物の反応がなくなりました。)
「は?それはどういう...。」
(言葉通りですよ。
多分、アルトがやったんでしょう。
これは由々しき事態です。)
「そんな大袈裟な...。」
(アルトは本気を出してマスターに何かをさせようとしてますよ!!
これは大問題だわ!!)
「いや、落ち着けって。
スノーフリーデン一帯の魔物っていってもそんなに居なかっただろう?」
(マスターはバカですか?バカなんですか!?数にして数千匹の魔物ですよ。
帝国兵2万人の食料を一瞬にして解決したんですって!!)
「なんだって!?」
(まあもって、1日か2日ですけども...。)
「と言っても、ここまで来てしまったしな...。
後20分もすればワイバーンの群れとぶつかるし...。」
(私に考えがあります。
マスター...。
超低空飛行をしてください...。)
「いや...。
下は大森林が広がってて、このスピードだと危ないって...。」
(いいから!!言うことを聞きなさい!!)
「は、はい!!!」
俺はヴォイスに従い森の中に入った。
(ヴォイス姉ちゃん怖い...。)
(背筋が凍ったの...。)
(アスタ...。リスク...。
これは絶対に負けられない戦いなの。
わかる....?わかるわよね...?)
ヴォイス声がドス黒く響く。
(はい!)(なの!)
(絶対負けないわ...。)
知将ヴォイスの目が血走っているのを皆が感じたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます