第123話、トカレフ将軍。


俺とアルトは軍の本隊の真上を飛んでいた。

そして、豪華な鎧を着ている男を発見した。

[鑑定]では隊長ではなくて将軍と表示されていた。

そして、俺達は将軍の前に降り立った。


「よっと...。あんたがこの帝国軍の将軍だね。」


「いかにも...。そなた達は何者だ?そして私たちは何故ここにいる?」


「俺はコウ・タカサキ。Sランク冒険者だ。」

「僕はこのレオンハート王国の第三王子、アルト・フォン・レオンハートです。」


「なっ!?

Sランク冒険者にレオンハート王国の第三王子だって!!

こ、これは失礼致しました。

私の名前はトカレフ。帝国で将軍をしています。」


トカレフはアルトの前に片膝を付いた。


「そして、アルト王子...。

私たちは何故ここにいるのかわかりませんか?気づいたらレオンハート国のスノーフリーデン領に居たもので、みな困惑しているのです。」


「その事に付いては俺から説明するよ。」


「コウ殿だったな。お願いする。」


「帝国軍まるごと洗脳されていたんだ。」


「せ、洗脳ですと...。この規模を?

一体誰が...。そんな事一介の人間に出来るのですか!?」


トカレフ将軍は冷や汗をかきながら俺に質問してきた。

どう説明するのが適切か俺は[思考加速]で言葉を考えた。


「もちろん。普通の人間じゃ無理だな...。」


「それじゃあ...。」


「俺は[魔の者]と認識している。」


「[魔の者]?」


「あぁ...。身体は持たなく自我を持っている黒いエネルギーの塊。それが[魔の者]だ。

そいつらは人間に入り込み、入られた人間の心を乗っ取って生きている。」


「そ、そんな事が...。」


「驚くのも無理はない。

...が、実際勇者オルガは乗っ取られた。」


「ゆ、勇者オルガ様が...。」


「あぁ。

でも、勇者オルガは完全に乗っ取られては居なかったため、引き剥がして[魔の者]を討つことは出来た。

そして、帝国軍全体に洗脳をかけた者は今、

一人で逃げて帝国に帰還している最中だ。」


「な、なんだと!?

それでは我々もすぐ帝国に帰還せねば!」


「ダメだ!」


「なぜだ!?帝国の危機に兵がいなくては守れるものも守れないではないか!!」


「今行ってもまた洗脳されるのがオチだ。

あなた達は学習してないのか?

これだけ大勢の人がいるのに誰一人として洗脳を自力では解けないじゃないか!!

また洗脳されてあなた達はまたこのスノーフリーデンを襲うつもりなのか!?

帝国に帰還すると言うならば俺の敵だな。

ここにいる全員を敵と見なして全員殺す。」


「ち、ちょっと。コウくん...。」


俺はアルトをハンドジェスチャーで黙らせる。

そして、[威圧]と[ペテンの戯言]を同時に発動させる。


「どうする?トカレフ将軍...。貴方の一言でここに居る帝国兵全員の命が決まるのだぞ。」


トカレフ将軍は思った。


圧倒的強者...。

従わなければ本当に全員殺される...。


ってかなんで俺ばっかりいつもいつもいつも...。

こんな役回りなんだよ。

将軍になれば後ろでのうのうと生きていけると思ったのに...。


このコウって人怖いよ...。

本当に人?悪魔でしょ!?

威圧感半端ないし...。

もうヤダ。


あっ。

そうだ、このコウって人に全部やってもらおう!

うん。それがいい...。

後は知らぬ存ぜぬで行けば大丈夫。

俺のユニークスキル[綱を渡る者]も言っている。

今回もこの危ない綱を渡れるハズ...。


トカレフ将軍は意を決して、


「わ、私はコウ殿に従う。私たちはどうすればいいのだ?」


「トカレフ将軍。英断、感謝する。

俺もガブリエルアイツを倒す前にパワーを使わなくて済む。

さて今後の事なんだが、一時的にスノーフリーデンが帝国兵保護をすると言ってもこの人数だ。さすがに街では入りきらん。

そこでスノーフリーデンの近くで夜営をしてもらう。」


「夜営って言ってもそんな道具我々は持っていないし、それに食料も...。」


「それに関しては大丈夫だ。俺達が用意する。トカレフ将軍は軍をまとめて班ごとに分けておいてくれ。」


「わ、わかった...。

それにしてもなんでここまでしてくれるのだ?」


トカレフ将軍の問いに俺は笑顔で答えた。


「決まっているだろ?友好国だからだ。

助け合うのは当たり前だろ。」


「たったそれだけで?」


「あぁ。友ってのは助け合うものなんだぜ。」


ドキューン!!


トカレフの心に深く何かが突き刺さった。


なんだこの胸のドキドキは...。

まさか、恋...?いやいや、まさか...。

俺には嫁も子供も居る。

そんなハズはない。

これは...。この気持ちは何なんだぁー!!


トカレフ将軍はコウを見ながら一人悶えていた。

俺はトカレフ将軍の視線に恐怖を感じていた。


「お、おい。アルト。

あの将軍の視線が怖いんだが...。」


「コウくんが格好いいことを言うから惚れたんじゃない?なんてね。

バカな事言ってないで1回みんなの元に戻ろう。」


「あぁ...。そうだな...。じゃあ、トカレフ将軍。また後で会おう。」


「は、はい!待っています!!」


なんで急に敬語なんだよ...。

怖すぎるよ...。トカレフ将軍...。


俺達は飛翔の魔法を使いみんなの待つスノーフリーデンの門に急いだ。


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