第119話、ボロックの覚悟。


「あれぇ?何でアンタがここにいるの?

まさかウリエルの奴やられちゃったのかしら?」


黒幕の女がニタニタと話しかけてくる。


「さあな...。ウリエルを追ってたらお前に辿り着いたって訳だ。」


「お前だなんてツレナイ言い方しないで。

私にはガブリエルって名前がちゃんとあるのよ。」


「お前もウリエルアイツと一緒でバカなのか?

今から死ぬ奴の名前なんて聞いてもしょうがないだろ?」


「今から死ぬ?誰が?まさか私が?ウフフ...。

冗談にしては笑えないわね。」


ガブリエルの顔から笑みは消え殺意に満ちた顔に変貌した。

そして、横笛を取り出して吹き始めた。

するとガブリエルの周囲に居た帝国兵が一斉に俺に目掛けて突撃してきた。


「やっぱり洗脳の元はお前か。」


「あはは。そうよ。この圧倒的な物量の前にアンタはどれだけ耐えられるかな?このまま押し潰されろ!!」


「物量?バカを言うな。

こんな雑兵がいくら来ようが俺の相手にはならない。」


「それはどうかしら??」


ガブリエルの吹く笛の音色が変わった。

それと同時に帝国兵達の顔色や体つきも全て変わっていった。


「洗脳魔法[狂鬼人化バーサクオーガ]。」


どうせ大したことないだろう...。

俺は一応、[鑑定]をしてみる。


.........。

.........。


すると、なんて事でしょう....。


俺に向かってくるほとんどの帝国兵のレベルが100に近くに上がっているじゃありませんか...。

これは少しヤバイかな...。


(お兄さんなら大丈夫!)

(私たちがいるの!)


ありがとう...。

アスタ。リスク。

俺に力を貸してくれ!!


(うん!)(なの!)


俺と聖剣アスタリスクの心が一致したのか、白銀のオーラが発生して俺の身体を包んでいった。

聖光気セイドリックオーラとは違うなにかだ。


「こ、これは?スゴい...。力が沸いてくる!!」


(お兄さん!!僕たちも力もパワーアップしてる。)

(力がみなぎるの。)


「行くぞ!!アスタ!リスク!」

(うん!)(なの!)


俺は向かってくる狂鬼人化した帝国兵士に突撃した。

レベル100を越えている兵士達がスローモーションに見える。


「一気に叩く!剣聖第三の剣義....桜吹雪!」


相手の攻撃を、舞い散る花びらの動きのように避けて次々と攻撃を繰り出していく。

帝国兵は次々と吹っ飛んでいった。


吹っ飛ばされた帝国兵士達の顔色が戻っていく。

[鑑定]をすると帝国兵達に掛けられた洗脳は解けていったのだった。


この白銀のオーラは一体...。

考えるのは後だ...。

今は目の前の帝国兵士達を倒して、ガブリエルのところまで行かなければ...。


俺は迫ってくる帝国兵士をぶっ飛ばしていった。




コウが帝国兵士と戦っている一方で、


ガァァン!!


「くっ!?固い!!なんだその盾は!?なんで僕の大鎌で傷一つ付かないんだ!!」


「お前が知ることではない。この外道が。」


ボロックは怒っていた。

勇者オルガの身体に入って、実の息子であるネモを殺そうとした事に。

騎士道精神一直線のボロックには許せない行為だった。


「僕にそんな口を利くなんてつくづくお前達は僕をイラつかせてくれる。」


「御託はいい。かかってこい。」


ボロックは大盾を構えてウリエルの攻撃に備えた。


「糞が!!その盾が壊れるまで攻撃してやんよ!!」


ウリエルの猛攻が始まった。

何度も何度もウリエルは大鎌を振るう。

しかし、その度にボロックは大鎌を受け流していた。

ボロックもソーマが防具を作ってくれる3日の間何もしなかった訳じゃない。

ボロックはこのパーティーでの盾役タンクとしての役割に不安を感じていた。

アルト様や他のパーティーを守れるのかと。

そこで他の騎士隊長や騎士団員に徹底的にしごいてもらった。

常に10対1で攻撃を受けて、その色んなかくどから来る攻撃を全て受け流す練習をした。

そして、[パリイ]のスキルを覚えた。

どの角度のどの攻撃が来ても受け流すスキル。

ボロックは盾役タンクとして確実に成長していた。


「なんだお前!大口を叩いた割に守ってばっかりで攻撃してこないじゃねーか!!キャハハ!!」


「今の私には攻撃なんか必要ない。」


そうボロックはアルトの魔法詠唱が終わるまでの時間を稼いでいたのだ。

ゆえに防御に専念するためにあえて攻撃はしなかった。

攻撃をすれば、隙が出来て[パリイ]が出来なくなるかもと考えたのだ。


「いつまで僕の攻撃に耐えられるかな?」


「いつまでも耐えるさ。」


「あっそ。じゃあ遠慮なく。」


ウリエルから絶え間なく続く攻撃にボロックの大盾にヒビが入り始めた。


(クソ...。頼むもう少しもってくれ...。

アルト様の詠唱が終わるまで...。)


「キャハハ!!もうすぐで壊れちゃうね!!」


ウリエルは笑いながら猛攻を仕掛けている。

そして、その時は来てしまった。


バキッ!!


大盾は耐久の限界を向かえて真っ二つにされた。


「はい!!これでお前は終了!!残念だったね!」


(間に合わなかった...。アルト様すいません。)


大盾を失ったボロックにウリエルが大鎌を振り上げた。


「死ね!!」


「させないよ!!極限解呪アルケットディスペル!!」


ウリエル真下に魔方陣が浮かび、聖なる光に包まれた。


「グアァァァァァ!!き、貴様何を!!

僕の身体がァァ!引き剥がされるぅぅ!」


勇者オルガの身体から引き剥がされ、現れたのは黒い塊だった。


「キ、キサマラ、ヨクモ...。ユルサナイ。ユルサナイゾォォォォ!!オマエノソノカラダウバッテヤル!!」


ウリエルたる黒い塊はボロックに向かって飛んでいった。


「させるか!!」


ドガッ!!

ウリエルは殴られボロックを吸収できなかった。

そこに割って入ってきたのはブレイブだった。


「勇気ある者よ。私と契約を結んでくれないか?そなたの力になりたい。」


「私の?いいのか?」


「あぁ。貴殿には助けられた恩がある。

それに戦う姿を見て感銘を受けた。

貴殿なら私の力を上手く使えよう。」


「頼む...。私に力を貸してくれ。」


「御意。」


そう言うとブレイブが人型から形を変えて大剣になった。


「すごい...。この力なら...。」


ボロックは大剣を握りウリエルなる黒い塊に近づく。


「ク、クルナ。クルナヨ!!」


ボロックはウリエルの言葉を無視をして大剣を振り上げた。


「じゃあな。」


ザシュッ!!


斬られたウリエルは灰になり消えていったのだった。




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