第20話、温泉は飛び込んじゃ行けません!!




馬車に揺られ早3時間...。

馬車の揺れで俺の可愛いお尻が限界になってきた...。

馬車にサスペンションみたいなのがないから、ダイレクトにお尻に響く...。


「ソーマ。後どれくらいで着くんだ?

俺の可愛いお尻が限界なんだけど...。」


「う~ん。後2時間くらいかな...。

コウくんのお尻が可愛いかどうかは知らないけど...。」


「マジで...。ちょっと休憩しないか?

ちょうど昼飯時だし。」


「そうだね。休憩しよう。

でも昼食なんてないよ...。」


「そこは俺にお任せあれ!」


馬車を止めて、草むらにシートを敷いた。

そしてノラ猫亭のオカミさんのお弁当を収納から出した。


「おぉぉ!!」


「みんな食べようぜ!」


みんな食べ始めた!


「コウ君!これ温かいんだけど...。」


「あぁ、それな。

俺の収納は時間停止も付いてるらしく、

出来立てがいつでも食べられるんだ!」


「本当に規格外だね...。」

アルトは驚いていた。

美味しい弁当を食べて、みんな満足してくれたみたいだ。

ゴングは5つも弁当を食った...。

絶対その分働かせよう...。

俺はそう誓った。


「そろそろ、行くか!」


またお尻が痛くなる馬車に揺られること2時間。

山の麓の宿場町まで着いた。


宿場町で馬車を預け、

ソーマの採掘道具をコウが収納した。


「ここからは徒歩だよ。

2時間位行った所に宿があるから今日はそこに泊まろう!」


「宿?」


「そう!温泉街ホットロールさ!」


「温泉街!?やったぁぁ!!」


「コウ君、テンション高いね。」


「そりゃそうだろ!温泉だぞ!」


俺はこのクラウディアに来てから、

毎日毎日、桶一杯のお湯で身体を拭いてたんだぞ...。

日本人足るものお風呂は欠かせないし、

温泉大好きなのだからテンションあがるのもしょうがないだろ...。


「よし!行こうぜ!温泉♪」


「気が早いよ...。

ここからはモンスターも出るから、気を引き締めないと...。」


「大丈夫、大丈夫!!

温泉の為ならエンヤコラ~♪」



「先生...。兄貴は大丈夫だべか...?」


「さぁ...。

気合い十分ってことでいいんじゃないのかな?」


「俺が前衛で行くから、

ゴングはアルトとソーマの護衛で。

アルト!俺が討ち洩らしたら宜しくね!」


「アルトくん。君達っていつもこうなの?」


「大体そうですね...。ハハハ...。」


「おらは二人をしっかり守るべ!」


「ゴングさん、お願いします!」


「先生。おらにさん付けは申し訳ねえです。

呼び捨てでお願いするだ。」


「それはちょっと....。

う~ん...。

じゃあ、ゴンさんって呼んでいいですか?」


「ゴンさんか...。

呼び捨て出来ないならしょうがねいべな。」



しばらく山道を歩いてると、

ガサガサっと岩が動いた。



「何かいるぞ!?」


周囲を警戒すると、

無数の岩が機敏な動きで動いている。


「ロックローチだよ!気をつけて!」

とソーマは言う。



...ロックローチ??


(マスターの世界でいうゴキ○リですね。)


カサカサッ!と目の前にいるロックローチが動く。


「キィッッッモォォ!!」

俺の全身に鳥肌がたつ...。


ロックローチは羽を広げてこっちをみてる。


まさか.....。

まさかだよね...?



バッサァァァー!!


「ギャァァァーー!!飛んできたぁぁぁ!!

ムリムリムリ!!絶対ムリッ!!」


俺は素早く瞬歩でゴングの背中にしがみつく、


「兄貴はああいうの苦手だべか?」


「あぁ!!マジでムリ!

ゴング!マジで頼む!」


「おらに任せるべ!!」


一直線に飛んできたロックローチの群れを、

ゴングはたたき落としていく。


ゴングが居てくれて本当に良かった...。

神様、仏様、ゴング様。

感謝いたします。

俺がゴングの後ろで祈っていると、


「兄貴、終わっただよ!」

「ゴング、本当にありがとう...。」

「おらにお礼だなんて、滅相もねえだ!」


「コウ君にも苦手なのあったんだね~。

ちょっと安心したよ。」


ん?

それはどういう意味だ...。


(マスターが規格外過ぎるから、

意外な1面を見たってことでしょう。

それにしてもあの焦りっぷり!

マスターは最高ですね! ププッ。)


そりゃどうも...。

俺だって苦手な物の一つや二つあるわ...。


「兄貴!

ここからはおらが先陣切っていいだか??」


「あぁ!ゴング頼んだ!」


「任せるだ!」



そこからはゴング無双だった。

ゴングが倒す、

俺のオート収納で魔石だけ集めていく。

なぜ魔石だけかって?

ゴキ○リの素材を収納するなんて死んでも嫌だからだ。


そんなことを繰り返すこと2時間。

とうとう、温泉街ホットロールに着いた。


「ゴング、お疲れ様!」


「こんくらいお安い御用だべ!!」


それにしても、

嫌がらせのようにロックローチゴ○ブリしか出なかったな...。


(そうですね。

ここから先はロックローチは出ないので、

マスターにとっては安心ですね。

ビビってる可愛いマスターを見れなくて、ワタシとしては非常に残念ですが...。)


そりゃどうも...。


「何はともあれ着いたね!

早速、宿に行こうよ!」


着いた先は老舗旅館で、めちゃめちゃ風情がある。

「お客様。極楽亭へようこそ、おいでやす~。」


俺達を和服美人の女将さんが出迎えてくれた。


「うちの宿はお一人様1泊金貨1枚どす~。

4名様どすね。何泊しますか?」


「ソーマ。

材料集めはどれくらいで終わるんだ?」


「材料集め自体は明日で終わるけど、

明日も温泉入りたいでしょ?

せっかく来たんだし。」


「それはもちろんだよ!

じゃあ2泊でお願いします!」


「ありがとうございます!

それでは金貨8枚になりますね!」


誰も財布を出さない所を見ると...。

やっぱり、俺ですよね...。

俺は全員分の金貨8枚を支払った。


「ありがとうございます!

それではお部屋ご案内します。」


女将さんに付いて歩いていく、

廊下でさえ檜のいい香りがしている...。


「こちらの部屋になります。

夕食前にお風呂に入られますか?」


「はい!」


荷物を置いた俺達はそのまま温泉に案内された。


ガラガラと扉を開けると、岩で囲っているところに極楽の湯が...。

待ちに待った温泉だ。

ちゃんと掛け湯をして...。



チャポン...。


俺は極楽の湯に身体を沈める。



はぁ...。

なんていう幸せなのだろう...。


(マスター。本当に幸せそうですね。)


あぁ。

生きてて良かったぁ...。

俺がしみじみしてると、




ザッパァァン!!!




俺は返り湯を頭から被った。


「コラッ!!ゴング!!

温泉は静かに入りなさい!!

これだから今時の若者は...。」


「す、すまなんだ...。

おら入り方知らなくて...。」




後で、静かに1人で温泉に入ろうと決めたのだった。

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