白夜、睡る星一つ

メルトア

第壱夜



 其の夜は明るかった。


 ニュースの生放送は騒々しく流れている。有り得ない事が起こったからだ。世界は荒れている。此処、日本を発端に。

 白夜。太陽が沈まない、明瞭な夜。それが今、日本で確認された。現在時刻は23時16分。未だ外はセンサー式電灯に照らされない。

 有り得ない事だ。有ってはならない事でもある。だって、周りの国は至って普通なのだから。何故か此の場所だけが、溢れんばかりの太陽光をその身に受けているのだから。


 当然のように混乱を窮めている人類の中で、しかし私と云うのは、余り気にしていなかったりなどする。

 元より、変化を嫌わない質だった事は間違いない。だがまぁ、彼のような阿呆らしい天変地異に巻き込まれても振れないのを見るに、どうやら私の此れは筋金入りのようだ。

 海外旅行と言うのを、した事は無かったので、いやはや。外つ国の名物を、自国で味わえるのは何とも幸福であるとまで思っている。

 少数派のようである。隣から子供の泣き声が酷い。五月蝿いと言うのは酷だろうか、私が可笑しいのだろうし。いや、しかしなぁ。

 悩んでいるうちに、声の主は泣き疲れて眠ったらしい。身勝手極まりない。其れが子供だと、言われてしまえば其れまでなのだけど。

 抑々、子供は余り好きではない。騒ぐし燥ぐ、耳障りな事此の上ない。幼子の頃の自分を省みても、其のような覚えはないのだが。はて、昔から変わり者だったのだろうか。

 無駄な事を考えていれば、睡眠など忽ち忘れてしまう。簡単な物だ。とは言え、明日も学校がある事に変わりはない。今宵は虫の声も然程響いていない。眠気は来ないが、寝てみるか。

 柔らかな布団の心地に目を閉じる。明日になったら或いは、いつも通りに戻っているだろうか。少し寂しい気もするから、続いて欲しいなぁ、などと独り言ちる。はてさて。


 エンドロールを靡かせない儘、夢のような夜が始まった。


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