第一部のおさらい
10分で分かる 第一部あらすじまとめ
※第一部未読の場合ネタバレになります。
〈序 兆し〉
由緒ある僧院で、「清廉潔白で出世欲のない『学者馬鹿』」と称されるアストラ師。
実は、「わが君」と称える主を守るため、本来の才覚をひた隠しにしている。
ある日、主から突然の呼び出しを受けるが……。
〈第一章 麗しき転校生〉
県立
中学からの親友、サッカー部の次期エース・
五月の大型連休明けに、俊のクラスに転校生がやってくる。
エキゾチックな美貌の少年、インド人の母をもつハーフの
その日の放課後、一緒に転校してきた一歳違いの妹、
美矢に絡み、俊に撃退されたことを怨む不良たち。そんな彼らに声をかける謎の男がいた。
〈第二章 甦る悪夢〉
白薔薇に例えられる華やかな美貌の和矢を追って入部してきた女生徒達のはた迷惑な喧騒に怒髪衝天の俊や美術オタクの毒舌家・
七月の文化祭目前、逆恨みした女生徒のリーダー格・
斎の弟・
ひそかに思いを寄せていた俊の怒りにふれ、涙する美矢。
俊もまた、怒りに任せて美矢に手を挙げたこと、美矢の危機に怒りの感情を制御できなかったことを悔やむ。
中学生の頃、サッカー部に所属していた俊は試合中の意図的なラフプレイに憤り、相手に不可思議な力で裂傷を負わせてしまった過去があった。
怒りのあまり人を傷つけてしまった自分の謎の力におびえ、サッカー部を辞めて、以降は感情を揺らさぬよう息をひそめるようにして過ごしてきた俊。
けれど、度々俊の感情を波立たせる美矢の存在に、おそれと甘いときめきを覚える。
一方の美矢も、兄・和矢から、冷静沈着なはずの俊がひどく感情を乱して現場に駆け付けた様子を聞き、再び慕わしい思いに心が締め付けられる。
そんな美矢の物思いに、謎めいた言葉を呟く和矢だった。
〈第三章 黄昏の魔性〉
マリカと訣別し、改めて美術部に入部した真実と共に、文化祭に臨む美術部のメンバー。
マリカらの報復に警戒していたが、大きなトラブルもなく文化祭は終わりを迎えようとしていた。
終了間際の夕暮れの中、美術部の展示会場を訪れた男性から告白を受ける加奈。
出会ったばかりの唐突な出来事に戸惑いながらも、加奈はその凄絶な美貌に一目で魅了される。
その場面を垣間見た真実は、その青年の持つ闇を感じ強い不安を覚える。
後夜祭を残すのみとなり部員たちは後片付けに励むが、真面目な俊が姿を見せないことに不審を覚える真実。
突然マリカが現れて、俊がマリカを助けるため不良たちに同行した、と聞かされる。
その頃。
俊は、薄闇の中で朦朧とした意識の中、自分が囚われたことを知る。
暴力を受け、再び意識を失う俊。
その瞳が閉じる寸前、青く冷たく輝いた。
〈第四章 凍てつく瞳〉
マリカの目撃情報を元に旧校舎周辺を探索する和矢、正彦、斎の三人。
その最中にマリカの証言が虚偽であることを指摘する斎。美術室に残された美矢、加奈などの女子部員の身を案じる和矢。
斎は共に残った巽が実は著名な武道家の後継者であることを明かし、俊の捜索を優先させる。
不良の
マリカも仲間であることを暴露し、全ては俊を傷付けるために画策したこと、その一貫で美術部の女子部員を襲撃させようとしていることを伝える。下卑た言葉で美矢や加奈を貶め、襲撃を指示しようとする須賀野に、俊は怒りをぶつける。
一方、美術室を襲撃した男達を瞬時に拘束し、俊を拉致した須賀野の居所を突き止める巽。
和矢に連絡を取り、無事俊を発見するが、時前後して加奈がトランス状態に陥る。
意識を失う寸前、「ワガキミガ……」という謎の呟きを残す。ただ一人その声を聴いた美矢は、加奈に宿る謎の存在を感じる。
〈第五章 疾風の帰還者〉
夏休みが終わり、和矢は再び学校生活が始まった。
フリーライターをしている和矢の叔母・弓子に雑誌から仕事の依頼が入る。
そのやり取りの最中、弓子は俊の様子を尋ねる。
文化祭での暴力事件で負傷した俊の療養、そして被害者の俊を誹謗中傷から守るため、事件の隠蔽に弓子は協力していた。
その弓子をリスペクトしながらも、加害者である須賀野は行方をくらまし当初は謝罪し影を潜めていたマリカが態度を翻したことに不安を感じる真実だった。
数日後、弓子の新しい仕事仲間として、打合せのために遠野家を訪れた、新人カメラマンの
健太は、かつてインドの下町で父や幼い美矢と共に暮らしていた少年・ムルガンであった。
懐かしい思い出話に花を咲かせる二人だったが、父・真矢の死を確認され、暗く微笑む和矢だった。
〈第六章 忘れられた守り手〉
和矢との再会で幼い頃の記憶を甦らせる健太。
自身の不可解な生い立ちや、和矢の父・真矢の死の真相に思いを馳せる。
養子になって日本に連れてこられたこと、結果的にそれが真矢との永訣となってしまったことの後悔から、強い喪失感を埋めるようにインドでカメラマン修行と称して放浪を続けていた。
しかしこの夏に、突然、助けを求める意思を感じて帰国しようという衝動が芽生えた。
その正体が分からぬまま、真矢に言われた『いつか守るべき人が現れ、苦しんでいたら、その時は守って』という言葉を思い返す。
三年生が引退し、美術部の新部長に選ばれた加奈。
副部長に斎が選ばれたことに不満を漏らした真実に対して、和矢はもちろん、最近とみに女子の間で注目されている俊を加奈と組ませることは、騒ぎのもとになると珠美に聞かされる。
真実が斎や珠美、巽らと軽口を叩きあい賑やかな雰囲気の美術部の変化に、加奈は微笑ましく思う一方で、他人と衝突しがちな美矢の頑なな様子に痛ましさを覚える。
そんな加奈自身も、文化祭で告白された井川英人と交際を始めていた。
幸せな恋をする加奈の様子に一抹の不安を感じる真実だったが、順調な交際の様子に取り越し苦労だったと無理矢理自分を納得させる。
編集者との電話のやり取りで、真矢の死を知らないはずの弓子がかつて新聞社に勤めていた頃、インドに赴任していたことを聞いた健太。
その時期が真矢の死亡したと思われる時期に重なっていることに不審を覚えた健太は、衝動的に部屋を飛び出した。
〈第七章 嵐呼ぶ遭遇〉
加奈の恋人を話題に盛り上がっていた美術部のメンバー。
評判のスイーツの話に発展し、和矢は美矢に俊を誘うように促す。
話題には入らず傍観していた俊は、突然誘われ難色を示す。
意気消沈する美矢に、「単に甘いものが苦手なだけ」と必死にフォローし、スイーツ以外なら付き合うと約束する。
下校途中、笑顔になった美矢の感情の変化を微笑ましく思い返していた俊の目の前に謎の男『シバ』が現れる。
須賀野に暴力を受けたあとPTSDを患っていた俊は、その名を聞き身をこわばらせる。
そんな俊を捕らえて、『シバ』は俊に告げる。
「お前こそが、『シヴァ』なんだ」と。
衝動的に弓子の元へ走り出した健太だったが、弓子にどのように問い質すべきか悩み、また弓子にショックを与えないために真矢の死については話題にしないという和矢との約束を思い出す。
そして、弓子の経歴をきっかけに、ほんのわずかな期間暮らしていた英国で弓子と邂逅していた過去を思い出す。
その時突然、かつてインドで感じ、帰国の理由となった助けを求める意思を感じる。気が急くまま駆けつけた健太は、男に取り押さえられる少年に遭遇する。
見知らぬ健太を「ムルガン」と呼ぶ少年を助けようと手を伸ばす健太。
二人を謎の青い靄が包み込み、現場から消え去る。
突然現れた健太に向かい、男は「イエット」と呼び掛けた。
俊が目覚めると、そこは健太の部屋だった。
俊の事情を尋ねられパニックに陥る俊を労る健太に、今までにないほど安心感と信頼感を寄せる俊。
『シヴァ』と『ムルガン』という父子の神を通して繋がっていることを本能的に感じ、また素直に受け入れる俊。
健太に渡された連絡先のメモをお守りのように大切にしまいこむ俊だった。
〈第八章 蔦絡まる紅葉〉
十月半ば、土曜日授業の昼下がり、真実は一人商店街をさ迷い、ランチデート中の加奈を見かける。
気になって店内を覗きこんでいた真実は、偶然知り合った健太に誘われ、店内に入る。
幸せそうな加奈の様子や、加奈に惚れ込む英人を目の当たりにし安心した真実は、健太とのランチを楽しむ。
加奈や健太を思いやる心映えに感じ入り、フィーリングもピッタリな真実に恋心を覚えた健太は、勢いで交際を申し込む。
強引に許諾をもぎ取り、つかの間のデートを楽しむ。真実を見送り、幸せを感じていた健太を『シバ』=英人が待ち伏せしていた。
正彦と下校途中、人影の少ない場所に移動する健太と『シバ』を見かけた俊は、健太の身を案じて二人を追いかけた。
〈第九章 消しえない絆〉
健太の過去を尋ねる英人が、かつて二人は同じ能力開発施設『
その頃の健太のコードネームの「
心の拠り所としていた真矢が和矢を守るため自分を捨てて、結果的に死に至ったことで、和矢を恨んでいると話す英人。
同じように真矢を奪われた健太が何故和矢を恨まないのか問い質す英人。いまだに癒えない顔の傷を見られて逃げるように走り去る英人を、健太は「
物陰から健太の身の安全を確認して安堵する俊にたいし、後を追ってきた正彦は説明を求めた。
俊の部屋で、事情を説明され、自分を卑下する俊に、「お前はいいヤツ」「お前が人を傷付けることはない」と諭す正彦。
中学時代、怒りに任せた不可思議な力に対して、俊自身はそれを止めようとしていた事実を告げる。
俊の居場所を作りたくてサッカー部に強引な勧誘を続けていたが、美術部に居場所を見つけていたことを知りそれを止めたこと、ありのままの俊を受け入れてくれる人間がきちんといることを伝える。
別れ際、これからも変わらず友で居続けることを伝える正彦。
俊の人間関係を尊重し、和矢や斎に俊を委ねる姿勢を見せる正彦。
二人の絆が強まったことを感じる和矢。
一方で心の距離が縮まる美矢と俊に対して、からかって楽しむ自分を内心揶揄する。
目的のために俊や健太を囲いこもうとする自分の行為を、けれど本人達には知られたくないと苦悩していた。
〈第十章 交錯する狂気〉
英人に夜のイルミネーションイベントに誘われた加奈。
夜のドライブを伴うデートに戸惑い、即答できない。
いまだに手もつなげていない関係に、英人の焦りを感じた加奈だったが、健太と手をつないで幸せそうに歩いていた真実を見かけたことを思い出して、もう少しだけ積極的になろうと決意し、デートを受け入れる。
同時に、英人に隠された顔があることを感じ、実際に前髪で隠した傷と共に、いつか自分に素顔を晒してほしいと願う。
加奈の誕生日にセッティングされたデートに喜ぶ加奈。
駅前のイルミネーションの前で、初めて手をつなぐ。
幸福な様子の加奈と英人を見かけた真実と健太は、その二人を剣呑な眼差しで見つめるマリカを発見する。
英人=シバに狂気めいた恋慕を抱き、乱れた生活を送っていたマリカは、本来自分が受けるはずの愛情を加奈に横取りされたと逆恨みする。
英人に忠告する健太。
健太があやふやな情報から的確に真実を導き出していることを知る。
そして、真矢の死に深く関わる組織に、和矢が属している可能性にたどり着いていることも。
英人は、最も真相に近い場所に弓子がいることを告げた。
〈第十一章 見えない虹〉
健太との出会いをきっかけにスマートフォンを購入した俊だったが、操作が分からない。
真実が操作方法を教え、気を利かせて美矢の連絡先を一番に登録させる。
その後、美矢に教えてもらいながら、健太の連絡先を登録しようとして、真実との関係を知る。
自分の知らない間に俊や真実と関係を作っていた健太に不審を抱く和矢。
取材の後、弓子と遠野家の事務所スペースで打合せをしていた健太は、よそよそしい態度で接していた和矢と実は親しいことを見破られ、真矢との関係も知られてしまう。
和矢に対して不審な思いを隠せない健太に、弓子は「一番ツラい思いをしているのは和矢」と話す。
真矢の生い立ちや出奔、和矢の属する組織について説明する。
外部の人間には知りえない事実を知る弓子は、真矢の死の真相を知るため、財産を投じて組織の一員となっていた。
和矢と美矢を守るため、敵対するなら健太でも許さないと言い切る弓子。
健太は自分も二人が大切だと伝えて弓子を安心させる。
二人の話を立ち聞きしていた和矢。
守っていたつもりの二人が自分を守ろうとしていた事実に打ちのめされる。
身の置き所なく家を出た和矢を、不意に斎が現れて自宅に誘う。
女子会で別行動をしていた美矢が帰宅すると、和矢からスマホに夕食不要メッセージが入る。
突然の行動に面食らう美矢だが、「年頃の高校生男子ならおかしくない」と弓子はおおらかに受け止める。
弓子からイルミネーションイベントの招待券をもらった美矢は、俊を誘う口実が出来たことを喜ぶ。
そんな美矢のもとには、和矢から外泊のメッセージが届いていた。
〈第十二章 哀哭の二重奏〉
和矢が斎の家に泊まり、翌日学校を欠席した。
巽から唐沢家所蔵の骨董品や書籍に興奮して徹夜だったと聞かされ、和矢の趣味嗜好を知る美矢は納得する。
和矢の欠席を心配する俊にメールで様子を伝え、ささやかなやり取りに心が踊る美矢。
そんな美矢が俊をイルミネーションイベントに確実に誘えるよう、珠美と真実は作戦会議を開く。
和矢も斎も欠席し、久しぶりに正彦と昼食を摂っていた俊は、正彦から斎が真実に恋愛感情を抱いている可能性を知らされる。
実は正彦自身も真実に恋していたが、それに気付かず、俊は真実に恋人がいることを告げる。
落ち込む正彦を見て、斎の気持ちを慮っているのだと誤解する俊。
放課後、美矢は順調に俊をイベントに誘うが、夜の外出であることを気遣い、俊は和矢の同行を求める。
結果的に加奈以外の部員全員と保護者代わりの健太とでイベントに参加することになった。
和矢が、美矢から心理的独立できるよう、俊と美矢の関係を深めるよう画策していた珠美。
幼馴染みの巽と恋人関係にあったが、本心では斎をずっと慕っていた。
斎が真実に恋している事実を受け入れがたい珠美は、巽に対して真実を揶揄する。
珠美の思いを知る巽は、真実を擁護しつつ、珠美の詰めの甘さを指摘する。
武道家を隠れ蓑に要人護衛を生業とする一族で婚約者として認められている二人。
珠美を得るために次期総領の座を目指してきた巽は、例え珠美が斎を思っていても、その身を得ること、公的に珠美を伴侶と出来る立場は手放さないと決意している。
幸せな恋人を演じながら、二人の思いは相容れない。
加奈の誕生日。
イルミネーションイベントを前に英人からバースデープレゼントを贈られる加奈。
誕生石のネックレスに喜びながらも、英人がどうしてここまで自分を愛してくれるのか自信が持てない加奈は、不安を表す。
加奈が嫌ならデートを取り止めようと提案する英人。
いつまで愛されるのか、いつまでも共にいられるのか分からず、今が幸せすぎて不安なのだと正直に告げる加奈。
英人は永遠に加奈を愛すると誓う。
ただし、「いつまでも一緒に」とは口にしなかった。
それに気付かず、英人に身を寄せる加奈。
二人はイルミネーションイベントの会場に向かう。
その後を、マリカが追っていた。
前日に訪れるはずだったイルミネーションイベントに加奈達と同じ日に行くことになってしまった美術部のメンバー。
弓子が運転手として同行してくれることになり、正彦も加わりイベント会場へ向かう。
家が会場に近い斎達と同行している和矢。
弓子に対してわだかまりを抱きつつも、巽に八つ当たりしながら精神的に回復してきていた。
駐車場で弓子達の到着を待つ和矢達の目前を英人の車が通り過ぎていった。
〈第十三章 冬空を貫く雷光〉
真実の采配で会場内に分散したメンバー達。
仕方なく斎とペアで巡ることになった正彦は、真実への思いについて尋ねる。
真実を深く愛するが、最優先に出来ないので手に入れようとは思わないと話す斎。
そして、好き、か、無関係以外の好悪の情がないと話す斎。
その序列で正彦は、自分が斎にかなり好かれていたことを知り驚く。
和矢は弓子と腹を割って話し、自分が深い愛情で守られていたことを知る。
その上で、和矢に守って貰えると信じていると無条件の信頼を寄せられ、改めて弓子を守ることを決意する。
イルミネーションを観賞しながら、俊は文化祭前に美矢に手を挙げたことを謝罪し、美矢も受け入れる。
イルミネーションに夢中になって転びかけた美矢を支え、そのまま手をつないで歩き始める二人は、恋人向けイベントの『赤いリンゴのオブジェ』を目指す。
そこでキス寸前までいっていた加奈と英人に遭遇する。気まずさから目を逸らしていた俊は、英人が『シバ』であることに気付き、凝視する。
俊の誰何から逃れるように立ち去ろうとする英人に、二人は知り合いなのかと驚く加奈。
そこに現れたマリカから、英人が『シバ』であり、俊を陥れるために自分や須賀野らを操っていた事実を暴露し、英人にふさわしいのは自分だと話す。
マリカへの愛情を否定する英人に対して、『シバ』でないことに気付いたマリカは、『シバ』を返せとわめき、英人の存在を否定する。
幼少期に存在価値を否定され続け、虐待を受けたことをきっかけに、解離性同一症、いわゆる多重人格を生じていた英人。
攻撃的人格の『シバ』がマリカを操るために誘惑していたことからマリカは『シバ』に恋していた。
英人本人は頑なにマリカを拒む。
憤ったマリカは、隠し持っていたナイフを手に、英人に襲いかかる。
英人を庇って負傷する加奈。
瀕死の加奈を抱きしめ、慟哭する英人。
その声なき嘆きに伴って、冬空を雷光が走り抜け、イルミネーションのライトを破壊した。
衝撃で引火した木々が勢いよく燃え上がり、反比例するように加奈の体温は失われていった。
〈第十四章 蒼き氷雪の曙光〉
駆けつけた健太が加奈の傷を止血しようと試みる。
呆然としている英人を叱咤し、加奈の救命に励むが、生命徴候はどんどん失われていく。
健太と共に救命にあたる俊の心の奥で、加奈を愛護する声が響く。
突然、大粒の雪が舞い落ちる。
温度を感じさせない不思議な雪は、燃え上がる木々の炎を消失させ、その傷を慰撫した。
同じく、加奈の傷もふさぐ。
生命の危機を脱した加奈の体には、臓器も含めて一切の傷が残っていなかった。
傷ひとつなく出血多量となった加奈を斎は唐沢家に運び治療にあたる。
中途半端な奇跡に、和矢は「試練を好むあの神の一族らしい」と妙に納得する。
英人の状態とその才覚、関係者のほとんどを心理的に掌握する健太のカリスマを、手元に欲しいと漏らす斎。
自分を安全圏に遠ざけて、蚊帳の外に置いたことを不満に思うと斎に訴え、逆にとっとと全員ひっさらって、組織に閉じ込めるのが最も安全で確実だと非難される。
それを厭う和矢に、斎をーー唐沢宗家の影の総領を動かしたければ、本音を話せと告げられる。
自分の思いを素直に口にした和矢に、斎は「気に入った」と守護を約束する。
数日後、順調に回復した加奈を見舞う俊と美矢。
甘い雰囲気を醸し出す加奈と英人、真実と健太にあてられて、早々に退室する。
美矢と手をつなぐ流れになってから、いまだに告白していないことに気付かされ、何とか思いを告げる俊。
人目を気にするように真実に揶揄され、逃げ出した二人の手は、しっかりつながれていた。
〈終 火種〉
唐沢宗家の保護を獲得した和矢の日本残留をアストラ師に確認する主。
また、英国方面に問題が生じているらしいことを示唆されるアストラ師。
和矢と美矢、英人にまで深い思いやりを示す主に、アストラ師は不快感を覚える。
主と同じ意味の名を持つ、
~以降第二部へつづく~
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