武器の嵐vs弾丸の雨 

 隠されたポイントの可能性をプレイヤー全体が意識し始めた中、次の戦いが始まった。


 第14戦目はレイランVSウォーカー。この2名はすでに敗者復活戦で対峙しておりお互いの力を把握している。それと同時にどのような戦いが行われるか期待の一閃でもあった。

 

 お互いにポイントを稼ぎつつアイテムを収集し、後半戦の戦い方の変化を彷彿とさせる死闘を繰り広げていた。


「レイラン、今回は俺が勝利する。手加減はしねぇからな」

「望むところです。あなたのおかげで私は一歩前へ進むことができました。そして、次は踏み台にしてもっと高く飛びます!」


 異国の繁華街で行われる戦い。ウォーカーはヴィランとして周りの人間の影響を考えずに戦うことができるが、レイランはそういうわけにもいかなかった。ヒーローという立場である以上は人々を守らなければという意志が強くなる。


「嵐のような舞を見せてあげます! 刹那的景致シャナーディジンヂー!」


 発生させた竜巻に己が武器を大量に放出し相手を渦へと巻きこむ技。攻撃に特化しているウォーカーにこの技はかなり答える。


「だったら、爆風ですべて消し飛ばす!」


 ロケットランチャーを構えたウォーカーはダメージ覚悟で自身の近くの地面へと打ち込む。竜巻は消滅し武器はすべて地面へと落ちていった。すぐさま次弾の装填を終わらせレイランへと照準を向けトリガーを引く。

 避けることには成功したが、真後ろの店にロケットランチャーは直撃しその爆風でウォーカーの方へと吹き飛ばされる。

 すでにウォーカーは銃を構えレイランを狙った。


「その状態じゃ避けれんだろう」


 無慈悲な弾丸の雨がレイランに降りかかる。


「だったら避けかなきゃいい!」


 瞬間的にスピードアップをするアイテムを使用し、軽く長い槍を取り出すと自身の前で素早く回転させ次々と弾丸を弾いていく。その上、弾く軌道をしっかりコントロールし周りの人々へ被害を出さないようにした。

 ウォーカーのほうへと吹き飛ぶ勢いは槍の回転と銃弾弾く際の微弱な衝撃で緩和され、相手の目の前に着地しそのまま槍で一突き。しかし、槍を持つ相手なら振るか突くかの二択を迫られることは、戦闘センスに特化しているウォーカーならば容易に把握しており、後方へ軽くジャンプしながら体を反らし一撃を回避した。


 一方でお助けプレイヤー同士の戦いが勃発しているが、それが終わるまでに二人は戦いを終わらせるつもりだった。それは、お互いにNPCの撃破でそれなりのポイントを稼いでいることと、決断する時残り時間3分ゆえの選択だった。


「お互いに1000ポイント以上は得ただろう。勝利ボーナスで決着がつく」

「それはお互いに望んでいること。あと2分もない。ここいらで決めましょうよ」


 レイランはそういうと残ったすべての武器を周囲へと解き放った。それに呼応するようにウォーカーもすべての武器を周囲に捨てた。奇しくもこの二人のエースストライクは今まで使っていた武器を全てなくすことで発動するもの。ウォーカーの身体能力が向上し一気に仕掛けた。

 その場から動かないレイランは接近するウォーカーを見て小さく不敵な笑みを浮かべて言った。


「悪いけど私のエースストライクはすでに以前のものと違うんですよ!!」


 舞うように全身を躍動させると、周囲に散らばる武器が風で浮き始めウォーカーを狙った。そう、レイランは戦いにおいて純粋なまでに勝利を狙うウォーカーがもう一度同じエースストライクを使用してくることをわかっていた。その上で、自身がこの場面で一番やりたい行動を強く念じ、新たなエースストライクを発動させた。そのためこの戦いで以前のエースストライクは使用できないが、それかまわなかった。


「スーパーアーマーと言っても数多ある武器に何度も傷つけられれば足を止められる。勝利へ純粋なあなたなら慣れた戦い方を崩したくないだろうって思ってね」

「くそっ、このままじゃまずい」


 ウォーカーは捨てた武器を拾おうとしたが、銃さえも風で宙を舞い手にすることが出来なかった。その直後、宙に舞う銃火器が一斉に発砲音を鳴らす。


「このエースストライクの効果範囲は私の周りにある放置された武器全て。手に持っていたり装備しているものは支配下におけないけど、あなたの武器はエースストライクのために放置したもの。ここにあるすべての武器が私の支配下にある!」

「……ゲームの世界では変化が常か」


 状況を察したところに、武器の嵐がウォーカーを襲う。

 そして、アナウンスが流れた。


「勝者、ヒーローサイドレイラン」


 勝利ボーナスによりレイランのポイントは2300を獲得。これはハルミやヨハネに次ぐ高得点であり、ヒーローサイドの勝利に大きく貢献したと同時に第四戦参加の可能性を高める一歩だった。

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