それぞれの思い

 ヒーローサイドに戻ったハルミを待っていたのは大差で勝利した余韻と歓迎ムードのプレイヤーたちだった。

 ミハルが駆け寄り声をかけた。


「さすがだね。マキナを圧倒するなんて正直驚いたよ」

「強かった。でも、まだ発揮してないから余裕をもって勝てた。成長したらもう一度戦ってみたいね」


 油断をしていなかったからこそ勝利することができた。並みのプレイヤーであればマキナの成長に驚き大きな隙を生んでしまうことも想像に難くない。


「ハルミが実力だけじゃないってわかったのが今回の発見かな」

「どういうこと?」

「勝たなければいけない理由があるんでしょ」

「あるよ。でも、真剣勝負する相手に語るようなことじゃない。ミハルだって目的があるんでしょ」

「するどいね」

「見てたらわかるよ。ほかに人にとってどうとかじゃない。ミハルにとって重要なことを抱えている。そんな気がするんだ」


 血のつながった師の下で戦い方は違うものの稽古を習ってきた二人にはどこか似た部分があった。容姿もさることながら考え方や物事の隠し方、戦い方にいたるまで。完全ではないがどこか完全な別人とは思えないほどの共通項を感じていた。


「まっ、思いも大事だけどそれに惑わされて決勝まで上がってこれないなんてへまはしないでよね」

「その言い方だとハルミは決勝にいく前提みたいだけど」

「あたりまえだよ。そもそも真剣勝負に勝ち以外の考えはいらない。勝利を目指しながら引き際を図るのも大事なのはわかる。だけど、前提として勝利をとろうとしないものは勝利できないよ」

「じゃあ、ハルミは決勝どまりね。私は優勝するから」

「いったな~。何がっても手加減しないから覚悟しててなよ!」


 勝利の余韻もほどほどにハルミは休憩ルームへと入っていった。

 戦いはまだ24戦行われる。たった一回の勝利で浮かれられるほど状況はよくない。だが、確実にヒーローサイドの流れが来ている。このまま連勝して精神的にもポイント的にも優位に立ちたいと全体が思っていた時、次のプレイヤーが呼ばれた。


「第二試合、フヨウVSアクア。それぞれポータルへ向かってください。メインプレイヤーの配置完了後、呼ばれたお助けプレイヤーの方もポータルへお願いします」


 ヒーローサイドからは忍者スタイルのフヨウ。ヴィランサイドからは青いマフラーに短い青髪が特徴的な少女アクア。見た目だけならばアクアのほうがよっぽどHEROらしく本人もそのこと気にしていた。それでも名を呼ばれた瞬間に気持ちを切り替え気合いを入れてフィールドへと向かっていった。


「ありゃりゃ、こんな早く私の番ですか」

「がんばってね」

「ミハルちゃんがお助けプレイヤーなら気が楽なんだけどねぇ~」

「そううまくはいかないよ」

「ですよね~。ま、ちゃちゃっと終わらせきますかね」


 神出鬼没な忍者と正統派王道ヒーロー風少女の対決が始まる。

 

 

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