拳と剣が交差する時 1

 ヒーローサイドのお助けプレイヤーロイド、ヴィランサイドのお助けプレイヤーマキナ、二人の激しい戦いは周りの兵士を巻き込きながらも戦闘能力のないものたちに被害を出さずに行われていた。


「これで!!」


 剣からうずまき状の風を発生させるがロイドは軽々とさける。しかし、背後には給仕が立っており攻撃におびえていた。風の軌道変えて屋根をぶちぬき被害は建物だけにとどめた。


「一般の人に被害を出すのは騎士道に反する。けがをしたくなければ早く離れなさい」


 戦闘能力のあるもの以外に被害を出したところでマイナスポイントになることはないが、それでも心の中に嫌なものを感じてしまうマキナはロイドの変則的かつ素早い動きに対応しながらも戦っていた。

 ロイドもそんなマキナのやり方を真似して多くの被害を出さずに戦っていた。これは自分ばかり有利な状態で戦っていてはつまらないという考えからだ。


「お人よしだな」

「戦いの被害にあうの現実でも物語でも関係のない一般人。せめて、私が戦う時くらいはそれを防ぎたいだけ」

「つっても設定上はこいつらもヒーロー側。一応敵だろ」

「武器を向けてくるのなら全力で叩く。でも、戦う意思のないものを切ってなんになる。それにこの戦いは時間制限がある。ただちに力をつけてくることもない」

「わっかんねぇな。ま、俺は闘争ができればなんでもいいがな!」


 現在、ハルミが多くの敵を倒したことによりわずかにポイントはリードしていた。だが、お互いにお助けNPCを倒しているためお助けプレイヤーを倒せば大きく差をつけることができる。残り時間8分という防衛には時間が多く攻めに転じるにしても最後まで攻めきれないという絶妙な時間であるが、ショーンが即座に戦闘へ復帰できないことがヒーローサイドの現時点での優位性だった。

 二人はお互いを倒す気満々で戦闘を繰り広げているがお助けプレイヤーはポイントを稼ぐことができない。さらにアイテムの使用も不可能なため、前線で戦いすぎると疲弊し容易にポイントを相手に譲ってしまうという危険性もはらんでいる。

 

 ロイドとマキナが戦っている間も複数のヴィラン側の敵を倒し細かくではあるが着実にポイント差を広げつつあった。ようやく二人の下へたどり着いた時には両者ともにだいぶ体力を削っている状態だった。


「うわ……。もう来ちゃったか」

「どうするよ。このまま俺が戦ってもいいしあんたにバトンタッチしてもいいぞ」


 お助けプレイヤーがポイント回収をできない都合上ポイントの高い相手のとどめをさすのはメインプレイヤーが行う方が効率よくポイントがたまる。


「弱ってる相手にとどめを刺すだけなんてのは好きじゃないけど勝つためにここはやらせてもらうよ」

「なに最初から勝った気でいる。私は二人とも倒して王女を倒してヴィランサイドの勝利を掴む気よ」

「それならそれでいい。現実では刀に負けたがゲームで勝利を納めるためにまずは剣でトレーニングさせてもらう!」


 ガントレットを付けた拳と剣がぶつかり合う。

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