サイドストーリー レイラン 6
どこかに潜むスナイパーを気を付けつつ次のエリアに移動したことでひとまず光の壁の収縮のことは考えず探索を開始した。
回復アイテム小を一つ、瞬間的に正面の攻撃を防御するピンポイントバリアを一つ。さらに攻撃アップを一つ手に入れ次なるエリアは至るところに川が流れるヴェネチアエリア。
江戸エリアから真逆の雰囲気のヴェネチアエリアの美麗な景観と複雑な地形がレイランの好奇心を強く刺激する。
――thirdエリア ヴェネチア――
「こんなとこで写真とれたらいいなぁ」
すでに二度、戦闘を行っており、先ほどの勝利のおかげで自信がつき案外呑気していたレイランは観光気分でお店を眺めていた。
「もらったぁ!!!」
突如上からの奇襲。細い路地での戦闘では槍や刀、太刀などの長物は使用できないため咄嗟に眺めていたお店へと飛び込んだ。ガラスの割れる音が響く後ろで鈍い音が響く。
後ろを振り向くと硬質なボクシンググローブを装着したオールバックの男が地面にひびをいれていた。
「ちっ、避けやがったか」
「あんな叫んだらそりゃわかるよ!」
「声出さねぇときあいでねぇだろうが。オラァ! もういっちょ行くぞ!!」
男のプレイヤーネームはマニー。ヒビをいれるほどの重い一撃を放つファイトスタイルかと思えば次は軽快なステップと素早い動きからの連打へと移行した。
「動きが変わった!?」
「ついてこれるカッ!!」
決してみきれない速さではなかったが狭い店内の逃げ場のなさがレイランの動きを強く制限していた。なんとか外へ出ようとチャンスを伺うがマニーもそれを理解してか素早いステップで塞ぎじわじわ前進している。
何か脱する方法はないかと観察していると、レイランは通常の武術と比べてボクシングの大きな違いを発見した。
レイランが見ていた武術というのは晴海がやるような実践的なリアルなものではなく、アクション映画やカンフー映画で取り入れられる大袈裟なものである。しかし、それと比べてもボクシングはあり得ない動きをしていた。
それはボクシングという格闘技のルールの上でのみ成り立つ動きだった。それを確かめるため、小型のナイフを取り出して上段へと攻撃を行う。なるべく左右へ回避されないよう横降りで。
「ヘッ! そんなののろいぜ!」
仰け反り回避されるとこの攻撃の意味がなくなってしまうが、マニーはレイランが予想していた通りの動きをした。武術。いや、手足の使える格闘技でもあり得ない動きを。
その動きとは顔を下へと下げることだ。中腰になり回避や防御の姿勢をとることはボクシングならありえる。だが、それを他の格闘技や武術で行えば命取り。なにせ、顔が下がったならそのまま膝蹴り、組み付き、掴みと様々な技へ繋げることが出きる。
だが、ボクシングにおいては拳だけが攻撃の手段。アッパーなどの危険攻撃もあるが膝蹴りは発生スピードも威力も高い。
「グハッ!!!」
マニーが中腰になった瞬間、顔面に強烈な膝蹴りをぶちこんだ。しかも、跳躍つき。アッパーを受けたように後ろへ倒れたマニーは予想外のことに固まっていた。
その隙に川沿い道を走っていると船には危険と記載された木箱に火気厳禁のマークが記載されてるものを発見する。しかし、いまはそれを気にする時間もなく少し先の広場へと走った。
「ちょうどいいとこにプレイヤーがいるじゃんか。あたしと相手しなよ」
声をかけてきた女性は、ホワイトとグレーが半分で分かれた不思議な髪型で、服装はタンクトップの上にライダースジャケットという現代的な姿をしていた。
「変なボクサーまでつれてきたのかい。二人まとめてリタイアにしてやるよ」
「俺の拳でその減らず口を黙らせてやる」
「二人で勝手にやってる間に逃がしてくんないかな……」
『逃がすか!』
「ですよねぇ……」
三つ巴の戦いが始まる。
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