第30話 とどめの一撃

 真っ赤に豹変したボスオークの攻撃は先ほどよりも速く力も増していた。地面を叩けば足元が揺れ、拳を震えは風圧で髪が揺れる。大きさは変わっていないはずなのに赤い体によって圧が増し並大抵のプレイヤーでは前に立つことすら拒むだろう。

 しかし、ミハルもレイランも臆せず立ち向かった。

 桜が舞い炎龍が吼える。ヤマトが遠距離から銃で気を引きその隙に二人が畳みかけるというコンビネーションが完成していた。

 

「みんな、準備ができたよ!!」


 ツバキの攻撃準備が整いあとはボスオークにあてるだけ。順調に進んでいたように見えたが一つ問題が発生してしまう。


「まって。どうやって当てるの?」


 レイランが言った。

 ボスオークは赤く凶暴化してから動きが速くなり一か所にとどまらなくなり当てるのは困難。通常のボスオークで外しているのに今の状態では掠ってくれるかもわからない。

 その間にも少しずつ疲弊していく二人。ヤマトも残りの弾丸が底をつき始めていた。だが、最後の頼みとして閃光手りゅう弾を手にする。


「これを投げます! 二人とも合わせて目を瞑ってください!!」


 目の前にヤマトの投げた閃光手りゅう弾が来たと同時に下がりつつも二人は目を瞑り巻き込まれないように対応した。

 目を開けるとそこには視界を一時的に防がれ暴れ回るボスオークの姿があった。しかし、さきほどまでのように動き回ることはなく一か所で拳を振るいミハルたちが近づいてこないように警戒していた。


「姉ちゃん、いまだ!」


 ヤマトが呼び掛けてもツバキは一向に撃たない。三人がツバキの方をみると。


「ご、ごめ~ん。私もみえないよ~」

「バカ姉ちゃんこんなときになにやってんだ!」


 ツバキは目を瞑るタイミングを誤ったらしくボスオーク同様視界を防がれていた。ほどなくして効力が切れると再びミハルたちに襲いかかる。


「ヤマトくん、ツバキのほうに移動して」

「何か策があるんですか」

「うん。失敗したら全員やられちゃうかもしれないけどこれ以上はじり貧になっちゃう。だから、一発逆転を狙う!」


 ヤマトはうなずきツバキのほうへと走った。それを行かせまいとボスオークは追いかけるがすぐに二人がカバーに入り無事にツバキのほうへとたどり着いた。


「ミハルのやりたいことわかってきた。でも、もっと花園の中心に移動してからじゃないと難しくない?」

「そうだね。このままだとツバキが咄嗟に判断できないかもしれないし追いつかれちゃう。距離を稼がないと!」


 二人は戦いつつもうまく位置を変えていき花園の中央で戦闘を繰り広げる。ミハルがヤマトに目配せするとそれを察しツバキに構えるよう促す。


「次は外せないからな」

「わかってるって。私に任せなさいな!」

「本当に大丈夫だろうか……」


 ミハルとレイランは大振りの攻撃を誘発し同時に技で攻撃を仕掛けボスオークを怯ませる。それに合わせ同時にツバキのほうへと走った。


「ツバキ! あとはお願い!」

「次は外さないでよね!」

「も~! 二人とも心配しすぎなんだけど」


 すぐに復帰したボスオークは凄まじい勢いで二人を追いかける。直線では速さで敵わずどんどん距離は近づくが二人は一斉に森へと飛び込む。


「迂闊に女の子に近づくと痛い目をみるんだよ! これでも食らえー!!」


 ツバキの槍から極太のビームが発射。

 ボスオークの体を包み込み眩い光と耳が痛くなるほどの音が辺りを支配する。

 光が収まり目の前が鮮明になるとボスオークの姿が消えていた。


「や、やったか!?」

「姉ちゃんそれフラグだから言わないで」


 静寂が訪れ四人はどうなるかと警戒していた。

 ほどなくして四人にクリア通知が届きようやく安堵することができた。


「終わったぁ~!! もう疲れたよぉ……」


 ツバキはその場にぺたりと座り込んだ。ヤマトも大きく息を吐き木に背中を預ける。


「やったね、ミハル」

「レイランがいなかったら勝てなかったよ」

「謙遜しなくていいよ。最後まで奥の手を出すか迷ってたからこんな風になっちゃったし」

「それを言ったら私もエースストライク出してないからイーブンだよ」

「全部出し切るのは大会の時だね」

「うん。その時は全力で」


 こうしてボスオークとの戦いは終わり三人はチームワークを高めることができた。


 第二戦はチームバトル。それぞれの力を発揮しつつもお互いへの信頼が必要だ。


――――


「もしもし~。師範代ですかぁ~」


 その声は能天気そうな雰囲気の若い女の声だった


「どうした。進展はあったのか」

「いえいえ。美春ちゃんの成長報告をと思いましてね。すごかったですよ~。初めて組んだ人や足手まといがいる中でもうまく立ち回ってましてね」

「あいつらしい。――あっちのほうはどうだ?」

「場所はわかりましたよ。今度接触してみるんで。場所言いましょうか?」

「いや、いい。子どもの友情に大人が水を差すの良くない。最後の最後でだめそうならば俺が動く」

「相変わらずですね~。そうだ、弟さんの教え子もかなり活躍してますのでいずれ美春ちゃんとぶつかるかもですよ」


 すると、師範代は一呼吸おいて答えた。


「美春が勝つさ」


――――


 家に帰った美春は勉強を終えてスマホを眺めているとバトルエースオンラインのアプリから通知がやってきた。


「総チーム52。通過できるのは35チームか。今回は人数じゃなく強いチームに入っている人が有利なわけね」


 チームの内訳が発表されそこにはハルミやマキナ、レイランやヨハネの名前も載っている。みんな参加プレイヤーと一般プレイヤーの組み合わせだ。

 そして、一つのチームに目が行く。


「これ全員参加プレイヤーだ。チームリーダーは……ノア」


 ノアは第一戦でポイント数一位のも猛者である。

 激闘の予感のするチームに美春は高揚感を覚えた。

 

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