第27話 ツバキとレイラン 2
戦意を失いそうなほどの体格差があるというのにレイランはボスオーク相手に立ち向かっていった。
大刀をその巨体に叩きつけるがボスオークはまったく動じていない。
「これはちょっと分が悪すぎる……」
レイランの一撃を受け止めたボスオークは次は自分の番と言わんばかりに棍棒を振り上げた。その動きは想像をしていたより遥かに遅いものだ。
てっきり巨体に似合わず俊敏な動きをしてくると警戒をしていたレイランはむしろ呆気に取られていた。素人でさえも避けられそうな動作。
しかし、次の瞬間その考えを改めることとなる。
「ッ!?」
振り上げるまではのろのろとあくびが出るようなものだったが降ろす時はまるで雷のように一瞬で地面へと棍棒が叩きつけられたのだ。
レイランは咄嗟に横にずれ回避したが当たっていれば一撃でやられてもおかしくない威力に動揺を隠せなかった。
ボスオークは何も言わないが明らかにレイランを舐めているような態度をとり挑発をしている。
「そこまでされたら引き下がれないよね!」
レイランは両袖から
再びゆっくりと棍棒を上げるボスオークに対し呉鉤による連続攻撃を試みる。
取り回しにくい大刀ではなく呉鉤によりたくさんの部位を攻撃し弱点を探す作戦へと切り替えた。どれだけ巨体かつ硬質な肉体を持っているとはいえ生身のモンスター。隙や弱点はかならず存在する。
「硬い……。でも、きっとどこかに!」
そうこうしている間に棍棒が振り下ろされた。
単純な軌道ゆえに回避することはそこまで難しくない。避けて棍棒が地面に当たる直前に跳躍し目を狙い剣を振るう。
その時、ボスオークは咄嗟に首を後ろへと動かしギリギリのところで攻撃を回避した。だが、レイランもそんなことは想定済み。すかさずもう一本の剣を投げつける。二度目の攻撃でボスオークはたまらず一歩後ろへ下がり姿勢を下げた。
「そこが弱点か!」
着地と同時に剣を離し即座に柳葉飛刀を取り出し顔に集中して投げた。
柳葉飛刀は苦無のような武器で手裏剣の部類に入る。投擲の名手ならその飛距離は200mに及ぶ。
ボスオークは棍棒で柳葉飛刀で防ぎ大きく方向をあげる。
「いよいよ本領発揮ってわけね」
ボスオークは棍棒をその場に置き姿勢を低くしたまま構えた。
仁王立ちの姿勢から急に低くしたことで嫌な緊張感が高まる。
「ツバキ! 踏ん張って!」
「へ?」
少し気を抜いていたツバキは唐突なレイランの言葉に反応が遅れてしまった。
その瞬間、ボスオークは勢いよくレイランを狙い突進を始めた。腕で目を防御しており攻撃の隙が一切ない。
なんとか横へ回避するが発生した衝撃で大きく飛ばされてしまう。それでも突進は止まらず直線状にいたツバキへと近づく。
「ちょっとやばいって!!」
「ツバキ、ガード!」
動揺し動きが遅れ接触する直前で盾をしっかりを構えた。
これではふんばりがきかず吹き飛ばされてしまう。
しかし、そんなレイランの想像を超える出来事が起きた。
ツバキの盾はガードした直後にボスオークに触れると光を放ち完全に攻撃を無力化した。
「うえっ! なんで!?」
レイラン以上にツバキが驚いてた。その隙を狙ってボスオークは盾に強烈な裏拳かましツバキはレイランのほうへと飛ばされ無事にキャッチされる。
「いた~い……」
「ねぇ、さっきのどうやったの?」
「わかんない。でも、直前でガードしたら光が出た」
「ジャストガードってことかな。当たる直前でガードするとノーダメージみたいな」
「う~ん、わかんない。防がなきゃってことだけを考えてたから」
盾ごと攻撃したボスオークは手を抑え痛みに耐えていた。
衝撃でツバキを飛ばしたが盾の硬さにボスオークの手が負けていたのだ。
「ツバキ、いまだよ。ビームをぶっ放して」
「おまかせあれ!」
槍を構えボスオークに向けると先端に光が収束。次の瞬間一気にビームが放出された。
しかし、ボスオークは間一髪のところで回避されビームは森のほうへと飛んで行った。
「やば……」
「これはまずい……」
花園の中央で息を荒くし二人をにらむ。直撃は回避したがボスオークの左腕がかすっており煙を上げている。
それが怒りを買ってしまいボスオークは今にも襲い掛かりそうな表情を浮かべていた。
「次撃てるまでにどのくらいかかる?」
「わからないよ~!」
「私がもう少し時間を稼ぐ。いざとなれば奥の手もあるから」
そういうとレイランは再び剣を取り出しボスオークへと立ち向かった。
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