第6話 シミュレーションモード 1

 エキジビションマッチから数日。

 ヨハネとの戦いの興奮も冷めつつある中、先に食堂でご飯を食べている美春のもとにいつも通り椿がやってきた。


「ごめんねー。まさかプリントに名前書いてないと思わなくて。でも、先生よくあれが私のだってわかったよね」

「そんなのいつもプリントの右下に落書きしてたらわかるよ」

「あれバレてたの!? 怒られないからバレてないのかと……」

「みんな気づいてるよ」


 椿は見た目に反して勉強はできるために小テストの空いた時間に落書きをするのが恒例となっている。

 

「あっ、そうだ。大和から聞いたけど今日からバトルエースオンラインでシミュレーションモードってのが解放されるらしいよ」

「シミュレーションモード?」

「好きなパーティーメンバーで好きな武器で好きなステージで練習が出来るんだって。学校終わったらやってみようよ!」

「確かに練習してみるのはありだね」


 二人は学校が終わると早速ゲームセンターのダイブマシーンでゲームの中へと入った。

 すでに大和はロビーで待機している。


「こんにちは美春さん」

「こんにちは」

「早速ですがシミュレーションモードに入るためにルームを作ってもらっていいですか?」

「ルーム?」

「はい。メニュー画面を開いてルーム作成してから俺と姉ちゃんを誘ってください。そのまえにフレンド登録もしておいたほうが便利ですよ」


 空中に現れたメニュー画面の操作を大和に教えもらい無事にルームに椿と大和を誘うことができた。


「SF映画に出てきそうな部屋だねぇ。ベッドも硬そうだよ」

「ルームの見た目はあとから自由に変えられるのか。みんなそれぞれ自由に決められるみたいです。美春さん、ここを押すと変えられますよ」

「これね」


 美春が海の家のような風景を押すと美春のルームは海の家となり外にはビーチと海が見える。


「海だぁ!!」


 椿はディアンドル的な服装のまま海のほうへと走っていった。まるで酒場のビールの売り子のような姿と広大な海は違和感があるが、そういった本来交わることのないものが同じ場所に存在できることがゲームの強みなのだ。


「これで練習できるんだよね。どこを押せばいいの?」

「このシミュレーションモードを新規作成して好きな場所や条件を選ぶんです。武器は練習用のものが自由に使えます。レベルアップなどはしませんが経験は活かされるのでいろいろ試すといいですよ」


 ステージは現実の世界にある東京やニューヨークやロンドン、近未来風のステージやファンタジックな森ステージやお城まである

 

「戦う相手も動かないマネキンのようなものからゲーム上に出てくるモンスターや敵の動きを模したものまで選ぶことができますよ」

「本当になんでもできるんだ。大和くんは詳しいね」

「べ、別にそんなことないです。ゲームが好きなだけですから」


 少し恥ずかしそうに言う大和の後ろから椿が現れた。


「大和ったら美春のためにずーっとバトルエースオンラインのこと調べてたもんね」

「バ、バカ! そういうこと言うなよ!」

「あー! バカと言ったらダメなんだよ!」

「バカにバカっていって何が悪いんだよ!」

「あまりバカバカ言うとお姉ちゃん拗ねちゃうよ!」


 二人の会話をつい笑ってしまった美春。

 そんな美春を見て二人も変な言い争いしていることに気づき笑いが込み上げ。


「じゃあ、そろそろシミュレーションモードしてみようか。大和くん、こんな感じでどうかな?」

「最初だからこれでいいと思いますよ」


 美春がシミュレーションモードを作成すると近くに光るポータルが足元に現れる。


「よし、二人ともいくよ」


 

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