第54話 悩めるエリザベス
最近考えることが多すぎて、エリザベスは疲れていた。
ふと気がつくとビアンの管理する庭園近くまで歩いてきていた。
ショコラさんに続いて宰相様まで兄に気があるのではないかという思いが、エリザベスに深いため息をつかす。ついこの間までのエリザベスだったら、牛魔族でないというだけで、完全否定をしていたが、今はそんな気分にもなれない。
「あっ、あれはショコラさん」
中庭の先にふわふわのオレンジ色の毛を見つけエリザベスは足を止めた。
本当は今すぐ駆け寄って過去の自分の言った言葉を謝りたかった。でもどうしても足が竦んでしまう。そう思っているとショコラはエリザベスには気づかずその場を立ち去った。
そしてエリザベスには見た。立ち去るショコラが片手で口を覆い潤んだ目をしていたことに。
唖然とショコラを見送ったあと、ショコラが立っていた場所のさらにその先に小さな二つの影が見た。
「あれは、お兄ちゃんとビアンさん……」
(そうか、ショコラさんはお兄ちゃんを見ていたんだ。でも私があんなことを言ったから…………)
エリザベスの胸がキュッと小さな悲鳴を上げた。
「私本当に無知だった。誰かを思う気持ちが、こんなに辛いことだなんて知らなかった」
ただ会って話がしたい。その顔を見たい。それだけだ。きっとそれを皆は恋と呼んでいるに違いない。そしてショコラもただ兄であるギルガメシュを見詰めていただけ。
『気が付いたら目が離せなくなってたんです』ショコラの心の叫びを思い出す。それと同時に、この間突っぱねるように返させた宰相様のツノのこともおもいだす。
(私は他人の恋路を応援するどころか、ことごとくつぶしていっているのに……)
「私に……ビアンさんの花園に行く資格なんて、ない……」
エリザベスはそう呟くと花園とは反対方向に歩き出した。
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