第26話 新たな効能
~エリザベスがランランに魔王様の髪の毛を渡す少し前の話~
「宰相様、おかゆ持ってきました」
おかゆを受け取るため扉を開けた宰相は、そこにギルガメシュとその妹と思われる牛魔族の娘の姿を見て眉間に皺を寄せた。
別に前の時のように女魔禁制だからというわけではない、牛魔族は獣系の中では体が大きいせいか下位魔族の中では魔力があるほうだった。とはいえそれでもこの魔王から漏れ出した魔力の渦の中を、結界で抑えているとはいえこの部屋まで辿りつくのは中位魔族でも容易なことではない。下手をしたらここにたどり着く前に気お失う恐れだってあるのだ。
さっきも中位魔族であるオーガが報告のためこの部屋の前まで来たが、もともとの青い肌の顔をさらに群青色にしながら、城の者の避難が終わったと告げるのが精一杯という感じですぐに去っていった。
それなのにこの下位魔族であるはずの牛魔族の二人は、いつもと変わらない様子で平然と立っているように見える。
獣系の中でも特に表情がわかりづらいとはいえ、最近ではだいぶギルガメシュの表情は顔から読めるようになってきたという自負がある。
具合が悪ければ、そうだとわかるはずだ。
「お前たち、本当になんともないのか。気持ち悪いとか? 頭が痛いとか」
「へぇ、大丈夫です」
「私も大丈夫です」
「……そうか、それならいいのだが」
多分無理をして強がっているわけではなさそうだった。妹はわからないが、ギルガメシュはそんな器用な牛ではない。
宰相はそう考えると、大丈夫なものを疑っても仕方がない、大丈夫なものがいる方がこの事態であるいまは都合が良いのだから。と思いそれ以上なぜなのか考えるのをやめた。
そうしてエリザベスからおかゆののった盆を受けとる。
その時である、その手首に巻かれた赤いブレスレットが目に入った。
「それは……」
宰相の視線の先を見て、エリザベスが答える。
「これは、兄がお守りにってくれたものです」
ギルガメシュを見ると、なぜか照れくさそうに頭を掻いている。その耳にも同じ素材から作った赤い房飾りが揺れてている。
「そういうことか」
宰相は一人納得するとおかゆを受け取り、少し待つように伝え。しばらくして大きな箱を持って現れた。
「これは?」
受け取りながら、ちらりと箱の中をのぞいたギルガメシュも、「あぁ、そうゆうことですか」とばかりに納得いったように頷いた。
「これを皆に配ってくれ、たぶんこれで魔力酔いは大丈夫になるはずだ」
宰相はそういうとニヤリと微笑んだのだった。
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