第25話 ランランの疑惑
「はい、これ」
そういうと、エリザベスはランランに丁寧に折りたたまれた紙を渡した。
「──っ。いままでどこ行ってたのよ」
心配していたのだろう、怒りながらもほっとしたような表情で渡された紙を受け取る。
「で、なんなのこれは?」
「開けて見て」
眉間に皺を寄せながら、紙を開くと中に入っていた赤い糸のようなものを見詰める。
「運命の赤い糸?」
さすが発想がランランである。思わず感心しながら
「違う違う、魔王様の毛」
「魔王様の毛?」
「うん。なんでもこの状況、魔王様の魔力が暴走してるせいで起こってるらしいよ」
「魔力の暴走!?」
ランランが驚きの声をあげる。
「で、それ身に付けとけば、魔力酔いとかしなくなるみたい」
「へー。そうなんだ」
そう言って再び紙の上の毛に視線を落としながら、確かにこれ受け取ってからちょっと気持ち悪いの治ってきたかもと呟いた。
「そうか、この気持ち悪さは魔力酔いだったんだ。って魔王様、超魔力漏れてんじゃん、ってか魔力漏れすぎじゃん、死んじゃわない?」
ランランがいつもの元気そうな声でそう言った。
「大丈夫なんじゃない、一応魔王様だし」
「そうなの、さすが魔王様すごくない?」
テンションがあがったのか、ランランが興奮した声をだす。
「どうしよ、どうやって持ってたらいいかな。やっぱ人形に入れとく? ほらこういうの入れる人形あったじゃない。藁でできた」
「いやいや、それは多分入れちゃいけない人形だと思うよ」
「そうなの? なんか恋のおまじない雑誌とかに載っていたと思ったけど……」
どんな占い雑誌だそれは。エリザベスが困った笑みを浮かべる。
「まぁそうかそうよね。それにこの毛いれたら魔王様と恋仲になちゃうかもしれないしね」
心配するところはそこなのか。と心の中で突っ込みながら、とりあえずランランが藁人形に魔王の毛を入れることをあきらめてくれたことにほっとする。
それから、どうしようかと考えていたランランが急にじっとエリザベスを見詰めて訊いた。
「ところでエリザベス。これって魔王様のどこの毛?」
周りを気にしながらまるで聞かれてはならないことのように小さな声で耳打ちをする。
「えっ……」
遠くでつるつるのオーガたちが、城から避難してきた魔族たちに包み紙を配っているのが見えた。
「…………」
「…………」
「……髪の毛?」
エリザベスが首を傾げながら自信なさげな顔で笑む。
「……だよ、ね」
そう信じたい。そんな思いが顔ににじみ出るような笑顔でランランも微笑み返した。
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