第19話 対決 エリザベス対ショコラ
兄の話を聞いた翌日エリザベスは早速秘書官たちをチェックした。
もちろんインターンシップとはいえ秘書室なんてすぐに行けるわけがない。
それでもあの手この手を使い、食堂に集まっている秘書官のリストを手に入れることには成功した。
しかし秘書官は一人ではない、果たして兄に色目を使ってると思われる秘書官をすぐに見つけることはできるだろうか。
しかしエリザベスのそんな考えは杞憂に終わる。なぜなら食堂で目が合ったとたんわかってしまったのだ。
犬魔族のなかでもポメラニアン系を思わせるふわふわのオレンジの毛皮につぶらな瞳、エリザベスよりだいぶ小さい、牛魔族でいったら子供のような外見の彼女は、エリザベスを見るなり明らかにヤバいという顔をして目をそらしたのだ。
~~このお話をお読みの読者様へ~~
会話形式でお送りします。
「」はエリザベス『』ショコラのセリフとしてお読みください。
()は二人の心の声なので相手には聞こえていません。
以上を踏まえた上でお楽しみください。
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「すみません。あなた宰相様のところの秘書官の方ですよね」
『はいそうです。ショコラと言います』
「ギルガメシュという牛魔族知ってますよね」
『はい、よく存じております』
「なら、私がどうしてあなたにこうして声をかけているかも、予想がついているんじゃないですか?」
『はい(漫画のことですよね)』
「その人私の兄なんですが、最近あなたに見られているっていうのですが、勘違いですか?(勘違いだと言って!)」
『すみません。気づかれていたのですね(恥ずかしー)』
「……(ちょっとなんでそこで赤くなるのよ)」
『……(この間宰相の机の引き出しの中にギルガメシュ様がつけている耳飾りと同じ赤い房飾りが見えた気がして、ガン見してしまったのがいけなかったのね。気をつけないと)』
「兄(が好き)なんですか?」
『はい、(主人公のモデルはギルガメシュ様です)すみません』
「どういうことか、わかってます? (牛魔族ですよ)」
『……ごめんなさい(勝手にモデルとして使って)』
「これからどうするつもりですか? (犬魔族はそこんとこ緩いだろうけど、お兄ちゃんに変な噂が付いたらどうしてくれるんですか、興味本位なら他を当たってください)」
『(今回はあまりに似すぎたキャラだったので、連載は断ろうと思ってます。でも)私は(この新境地、同性愛漫画を書き続けることは)諦めたくないです』
「(なによ、そんな真剣な顔で熱い眼差し向けったって)私は難しいと思います」
『(そりゃあいままでにないジャンルなのはわかってるけど)それでも……」
「一時の感情に流されているだけじゃないんですか!?」
『確かにそうかもしれない……(ファンはすぐに離れていくかも)』
『……ギルガメシュ様はどこまで知っているのですか?(漫画は読んだの? モデルだって気が付いたの? それとも私に観察されていることだけ?)』
「ただ視線を感じるとだけ──」
『そうなんですね……(漫画は読んでないようね、読んでたら感想聞きたかったな)』
「……私は認めません(二人が付き合うことは)」
『そうですよね(兄がモデルということは相手も実在人物であると予想付きますものね。異種族でさらに同性愛なんて妹としては受け入れがたいですよね)』
「(そりゃあお兄ちゃんは格好いいし好きになってしまうのはわかるけど。毛色がちがうだけでも難しいのに)種族が違うことは牛魔族にはあなたが思っている以上に大変な障害なんです。もしこのことが親戚の耳にまで入ったらお兄ちゃんは──」
『(そうか、私の漫画のせいで二人の仲がバレたら引き裂かれてしまうかもしれないのね、考えてなかったわ)──っ!』
「(顔色が真っ青だわ)──」
『ごめんなさい』
「(目に涙が)っ!」
『でも気が付いたら目が離せなくなってたんです。気が付かなければよかったこんな気持ち(二人をいつまでも観察していたい、でもそのせいで二人に)迷惑をかけたかったわけじゃないんです』
「ショコラさん……(やはり異種族の恋愛の厳しさに彼女なりに悩んでいたんだ)」
『諦めます(新連載も)。もう見詰めたりしません(二人の逢瀬)だからギルガメシュ様にも勘違いだとお伝えください(宰相様に知らたら殺されますし私)』
「それで、いいんですね(身を引いてくれるということですね)」
『はい。私は彼(ら)が幸せならいいんです(自分の漫画が売れることより)』
「ここまでショコラさんが真剣だったなんて(興味本位で色目を使っていたと思ってて)ごめんなさい」
『いつだって私は(漫画に対して)真剣ですよ』
「(そんなふうに相手のことを思って自分の恋心を捨てれるなんて)ショコラさんは大人ですね」
『(腐った)大人になったんです』
「私も(せめて同じ牛魔族だったら、応援できたかも)嫌いじゃないです(ショコラさんのこと)」
『ありがとうござます(兄がモデルでない漫画だったら腐女魔友達になれたのかな)』
そうして二人は少し悲し気に微笑みながら、熱い握手を交わしたのだった。
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