第3話 エリザベスと白黒の親友
「で、どうだったのよ、エリー」
エリーと呼ばれた牛女ことエリザベスは今流行りのタピオなる飲み物をズズズとストローで吸い上げながら、目の前に座っているパンダ魔族の親友ランランに向けて首を傾げた。
「なにが?」
「なにがじゃないわよ、見たんでしょ」
「だから、何を?」
「魔王様よ」
なぜか口元を片手で隠しながら、ひそひそ話でもするように尋ねる。
「あぁ、見てないわ」
「なんでよ」
おもわず立ち上がったランランがハッとあたりを気にして席に着く。
「だって、この間、魔王様の寝室に行ったって」
「いったけど、なんか女魔禁制って、すぐに追い出されたわよ」
「そうなの」
ランランも急に興味がなくなったように、ズズズとタピオを一飲みにする。
「なにランラン、魔王様に興味あったの。あんなに白黒柄じゃない奴に興味ないって、こないだ白熊魔族の彼振っていたくせに」
「そうよ、白一色なんてつまらない雄に興味なんてないわよ。でも魔王様は別よ。だって、魔王様を射止めたら皇后よ」
夢見るお姫様のようなまなざしでどこかを眺めるとフッと吐息を漏らす。
「えー私はやだな、皇后だって、なんか面倒くさそうだし、だいたい白黒のまえに毛がほとんど生えてないのよ、私は無理」
エリザベスが鼻で笑う。
「まぁそうよね。魔王様って上位種族に進化したとはいえ所詮鬼族だもんね」
そういうと、遠くの方で騒いで大声で騒いでいる鬼族の一団とちらりと目で見てため息をつく。
オーク・トロール・オーガ。鬼族から進化した魔族は多々あるが、そのどれもが頭の上からつま先までほぼ毛が無いツンツルテンだった。逆に頭部にだけ毛を残したままの進化の仕方は鬼族系魔族では下に見られるという。
「やっぱ、私も無理。いくら贅沢できても毛皮がないなんてありえないわ」
「でしょ」
「ちなみに宰相様はどんな方だったの?」
「宰相様は……」
腰のあたりまで伸びた深い新緑を思わせる長いストレートの髪。兄を気遣う優しい金色の瞳。そして渋い金色の細い角。
魔族は上位進化を遂げるほど、なぜか人間に容姿が似てくると言われている。
「上司としては悪くはないけど、恋人としてはないわね。やっぱ顔に毛がない時点でいくら上位魔族でも無理」
鼻で笑い飛ばすと首を横に振る。
エリザベスのその様子にランランもすっかり興をそがれたようで、カバンからファッション雑誌を取り出すと、次の話題を探すのだった。
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