No.15:「Iカップですか?」


 週末の日曜日。

 すみかさんも、バイトはお休みだ。


「うーん……」


 僕はキッチンの前で唸っていた。

 どうすれば再生回数が伸ばせるだろうか。

 登録者数を増やすには、どうすればいいんだろう。


「翔君、どうしたの? 難しそうな顔して」


 すみかさんは、遅いブランチを食べて今コーヒーを飲んでいる。

 今日の部屋着はスウェットの上下。

 お店のロッカーに置いてあったものを、持って帰ってきたみたいだ。

 露出度が少ない分、僕の気持ちは落ち着く。

 でもちょっと残念な気分。


 ちょっとすみかさんに、相談してみよう。


「すみかさん、ちょっと相談です」


「なになに?」


 すみかさんに、「業スーShowちゃんネル」を見てもらった。

 なかなか再生回数も、登録者数も伸びない。

 どういう料理を紹介すればいいだろうか。

 ぶっちゃけて聞いてみた。


「へー、こんなチャンネルやってたんだね。翔君らしいよ」


「まあ業スー自体は旬ですし、独身者向けの料理というのもアリかなと思ったんですけどね」


「ふーん。ちょっと他の料理動画も見てみるね」


 すみかさんはスマホで、他の料理動画を見始めた。

 2-3分見ていただろうか。


「ねえ翔君、これ」


 すみかさんは自分のスマホを僕の方に向けてきた。

 ある動画が再生されている。


「あーこれ知ってますけど……」


 有名な配信者だ。

 女の人が何のひねりもない、普通の料理をする動画だ。

 肉野菜炒めとか、焼きうどんとか。


 ただその特徴は、その女の人そのものにある。

 ものすごい巨乳なのだ。

 そしてピッチピチの、体に張り付くTシャツを着ている。


 当然視聴者は、料理なんかに目はいかない。

 女性の胸に釘付けとなる。

 まあ視聴者のほとんどが、男性だろうけど。


 ただ最近聞いた話では、やりすぎで収益化がストップされたという話も聞く。


「これ、私がやればいいんじゃないの?」


「はい?」


 これを、すみかさんが?

 それはなんという……魅力的な……


「えっと……すみかさんが料理をするってことですか?」


「違う違う。料理は翔君で、私はアシスタント。それで胸を強調するようなアクションをすればいいんだよね?」


 僕は唾を飲んだ。


「でも……Gカップじゃ、小さいのかな……」


 すみかさん、十分です。

 Gカップで十分です。

 そういえば誰か、すみかさんGカップだって言ってなかったっけ?

 そうだ、亜美だ。

 亜美すげーな、大当たりだ。


「あ、そうだ。ちょっと待っててね」


 すみかさんは自分のベッドに戻った。

 衣装ケースから、何かゴソゴソ出している。

 一つは……ブラジャーだった。


 着替えようとしているみたいだ。

 自分のスエットシャツに手をかけて、脱ごうとした。


「ちょ、ちょっと、すみかさん! 丸見えです!」


 キッチンからは、仕切りも何もない。


「えー面倒くさいなー。翔君、あっち向いてて」


 僕はクルリと後ろを向く。


「下着は見られてもいいけど、さすがにナマはねー」

 とか言ってる。


 いいかげん、下着の貞操観を正そうよ。


「はい、オッケー」


 と言いながら、すみかさんはキッチンに戻ってくる。


 うわっ、胸がすごいことになってる。

 外人サイズ並に、パワーアップしていた。


 スエットシャツから、ピッチピチの白いショートTシャツに着替えている。

 胸がロケットのように飛び出して、アンダーバストの位置でまたシャツが絞られている。

 胸の強調度合いがハンパないし、ブラジャーの細かい模様まで浮き出ている。

 そしてかわいいおヘソも見えている。


 ただもう、ひたすら、果てしなく、エロい。


「な、何が起こったんですか?」


「うん、これ盛ったの。ヌーブラってわかる?」


「わかりません」


「ヌーブラってね、シリコンでできた胸に直接当てるタイプのブラジャーなのね。で、その上に、またブラをするわけ。だからこのブラはIカップ」


「Iカップですか?」


 もうどんだけ大きいのか、分からない。

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