No.14:「Gカップぐらいかな」


 それから2人で明日以降の予定を確認した。

 すみかさんは、明日から夜のバイトだ。

 日曜日はお休みで、土曜日は不定休らしい。

 大体ここを夜の7時半くらいに出る。

 ということは、僕がバイトの日は入れ違いになるんだ。


 日中すみかさんは、掃除と洗濯をやってくれると申し出てくれた。


「いいんですか?」


「全然! 洗濯は洗濯機を回すだけだから。翔君、洗濯物は出しといてね。それとお掃除は……翔君、やっぱりエッチな本はベッドの下に隠してるの?」


「今時そんなベタなことをする高校生いませんよ」


「あー……動画派だな」


「……黙秘権を行使します」


 僕もできるだけすみかさんの分の食事を作って、冷蔵庫に入れておくようにしょう。


 食事も終わってテレビを見てたら、もういい時間だ。

 一人ずつシャワーを浴びて、歯を磨く。


 今日もすみかさんは、ロングTシャツ一枚だ。

 白いブラとグレーのパンツが透けている。


「すみかさん、やっぱり目のやり場に困ります」


「頑張って慣れてほしいかな。見られてもいいけど」


「大丈夫です、足は見ませんから」


「じゃあ大丈夫。翔君、信じてるからね」


 こうやって毎日試されるの?

 結構辛いんですけど……。


………………………………………………………………


 翌日の昼休み。


 僕はいつも通り、智也とお昼を食べている。

 智也のお弁当は、僕の倍ぐらいの大きさがある。

 体もでかいし、バスケって体力使うだろうしな。

 

「智也、きいてよー。翔がさー、すっごい美人のいとこのお姉さんとデートしてたんだよ!」


「なにっ?」


 割り込んできた亜美の声に、智也は反応した。


「いとこって誰だ?」


「え、ああ、最近引っ越してきた、いとこのお姉さんだよ」


「美人か?」


「ん? ああ、まあ」


「巨乳か?」


「そーなの! もうね、巨乳だったよ。ボン・キュッ・ボンみたいな。あれはね、多分Gカップぐらいかな」

 亜美の手つきがいやらしい。


「なんだと! 翔、許せん! 直ちに俺に紹介しろ!」


「断る」


 なんだか面倒くさい展開だな。


「翔、それですみかさんって、何やってる人なの?」


「え? ああ、今就職浪人中でバイト生活らしいよ。教師になりたいらしい」


「へーそうなんだ。大変そうだね」


「ところで亜美、どこで翔とそのお姉さん、見たんだ?」


「リトニの日用品売り場。もう仲良さそうに歩いちゃってさー」


「別にそんなんじゃないよ」


「そっかなー? 翔、もう顔がデレデレだったよ」


 そんなことはないと思うんだけど……。

 デレデレだったのかな?


「ふーむ……ということは、亜美、これは確認する必要があるな」


「確認する必要があるよね」


「よし、今度翔のアパートにガサ入れだ」


「それはやめてよ」


 いやマジで洒落にならない。


「いやほら、今色々と片付かないんだよ。動画撮影とかやってるしさ」


「動画っていっても、あの料理の動画でしょ? 誰も見てないやつ」


 亜美がグサリとえぐってくる。


 僕はYoutubeに動画をアップしている。

 チャンネル名は「業スーShowちゃんネル」。

 業務スーパーで買ったものを材料にした、一人暮らし用の料理を紹介している。


 これがなかなか再生回数が伸びない。

 15本ぐらい動画をアップして、チャンネル登録者数が900人以下。

 1000人以上にならないと、Youtubeは収益化されないのだ。

 頑張って900人近くまで伸ばしたが、ここから先が全く伸びない。

 

「とにかく今は難しいんだ。落ち着いたらまた呼ぶから。それよりどこか遊びに行った方が楽しいんじゃないかな?」


 でもすみかさんがウチにいる間は、呼べないってことだよね。

 これは思っていた以上に、難しいかも。

 でもやるしかないんだ。


「んー、そうだね。じゃあカラオケでも行かない?」


「お、いいぞ。俺しばらくカラオケ行ってないし」


 ここは何とか、カラオケで逃げておこう。

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