No.02:業スーの冷食


 湯沸かしポットに水を入れ、ボタンを押した。

 次に冷凍庫から、業務スーパーの「焼肉ライスバーガー」を取り出して電子レンジに放り込む。

 2分にセットして、ボタンを押す。


 棚からお椀を取り出し、中華スープの素を入れる。

 沸いたお湯をその中に入れ、さらに卵を溶いて入れる。

 最後に冷凍の刻みネギを大量に入れる。

 こうするとスープが早く冷めるからだ。


 焼肉ライスバーガーと卵スープと箸をトレーにのせ、僕はしばし考える。

 彼女を家に上げて、いいものだろうか。


 結局僕は、トレーを玄関口まで持って行った。


「とりあえずお腹に入れましょう。どうぞ」


 僕は彼女の前にトレイを置いた。


「い、いいの?」


 小さいながらも、はっきりと声が聞こえた。

 スポーツドリンクで、少しは元気がでたんだろう。


「とりあえず食べてください。話はそれからということで。熱いから気をつけて下さいね」


 彼女は少し申し訳なさそうな表情をしたあと、手を合わせて「いただきます」と小声で言った。


 彼女は焼肉ライスバーガーにむさぼりついた。

 5口ぐらいで平らげてしまった。

 卵スープを飲んで、「あっつい!」と声を上げた。

 だから言ったのに。


 彼女がすべてを平らげるのに、2分とかからなかった。


「えーと……まだ食べますか?」


「……いいの?」

 彼女は上目遣いで聞いてきた。


 心臓のテンポが早くなった。


 彼女の柔らかい表情。

 美人と可愛さの両方を持ち合わせた顔つきだ。

 そして……胸のボリュームが凄い。

 さっきの手の感触を思い出した。


 ウエストも細くて、その下のボリュームのあるヒップへと続く。

 タイト目のワンピースだから、体型がよく分かる。

 いわゆるボン・キュッ・ボンの体型だ。


 横座りしている彼女の膝が目に入る。

 白くて肉感のある太ももから、僕はまた目をそらす。


 僕は自分を落ち着かせて言った。


「いいですよ。と言っても冷凍食品になっちゃいますけど。立てますか?」


 彼女はゆっくり立って、靴を脱ぎ始めた。

 その時足がもつれて、僕の方に倒れてきた。


「危ない!」


 僕は彼女を下から抱きとめる。

 女性らしい香りが、僕の鼻腔を刺激する。


「ご、ごめんなさい」

 彼女の小さい声が聞こえた。


「歩けますか?」


「は、はい。本当にすいません。ご迷惑をおかけして」

 少し食べて元気になったのか、遠慮がちだが彼女の声はしっかりしていた。


 部屋に入ってもらった。

 広めの1K。

 30平米ぐらいだろうか。

 キッチンの前に小さなテーブルと、椅子が2つ。

 そこに座ってもらった。


「とりあえず、さっきのスポーツドリンクでも飲んでて下さい」


 僕は冷凍庫を開けた。

 そして業務スーパーの冷凍チャーハンと、冷凍ブロッコリーを取り出した。

 とにかく早く作らないと。


 僕は大きな中華鍋に油をひいて火にかける。

 その間にブロッコリーを耐熱容器に入れて、電子レンジで1分加熱。


 ちょっと迷ったが、冷凍チャーハンは一袋1kgを全部入れた。

 余ったら自分が食べてもいいし、容器に入れて彼女に持って帰ってもらってもいい。


 電子レンジからブロッコリーを出して、そのままごまドレッシングをかける。

 そして彼女の前に箸と一緒に置いた。


「先にブロッコリー食べてて下さい」


 彼女は僕を見上げて「ありがとう」とつぶやいた。


 冷凍チャーハンはちょっと時間がかかった。

 本当はレンジで先に少し温めてから炒めると、早くできる。

 今回電子レンジはブロッコリーを優先した。


 出来上がったチャーハンを、お皿二つに分ける。

 半分ぐらいは、まだ中華鍋に残したままだ。

 一人前約250gだから、1キロだと4人前だ。


 お皿二つとスプーン二つ、それから僕が飲む水をテーブルの上に置いた。

 そして僕も席に着く。

 ブロッコリーは既に彼女のおなかの中に収まっていた。


「僕も少しお腹が空きました。じゃあ食べましょう」


 僕は彼女を正面から見る。

 どこかで見た芸能人に似ている気がした。

 少しあどけなさが残った、透明感のある美人だ。

 歳は……大学生ぐらいだろうか?

 僕の心臓がまた少しだけ早くなった。


 二人で手を合わせて「いただきます」と言った。


「本当にごめんなさい。でもありがとう」


 彼女はそう言って、チャーハンを食べ始めた。


 彼女の食べるスピードが速い。

 よっぽどお腹が空いていたんだろう。

 フードファイター並みのスピードだ。

 あっという間に一人前が空になった。


「チャーハン、まだありますよ」


「……もうちょっとだけ、もらっていいですか?」

 彼女は遠慮がちに言った。


 中華鍋から、もう一人前分盛り付ける。

 多かったら残してもらえばいい。


 彼女の前に、チャーハンを盛り付けたお皿を置く。

 彼女のスプーンが、お皿と口の間を往復をする。

 一定のスピードで彼女はチャーハンを食べ続けた。

 よっぽどお腹が空いていたんだな……。


 彼女の2杯目のチャーハンのお皿は空になった。

 僕のお皿と同じタイミングで。

 スポーツドリンクのペットボトルも空になっている。

 彼女のために出した、水の入った別のグラスを口につける。

 コクコクと可愛いらしい音が喉から聞こえる。


「ごちそうさまでした」

 彼女は手を合わせて、小声で言った。


「本当にありがとう。生き返ったよ」


 焼肉ライスバーガーと卵スープ、ブロッコリーにチャーハン2人前を平らげた彼女はすっかり元気そうだ。

 顔色がよくなった彼女は、可愛さが3割増しになった。

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