BAN

@smile_cheese

第1話:カップ麺と私

眩しすぎる太陽がカーテンの裾から漏れる。

真っ暗な部屋が少し明るくなった。

そうか、いつの間にか朝になっていたのか。

私は持っていたゲームのコントローラーを床に置き、眠い目を擦りながらカップ麺にお湯を注いだ。

テレビのリモコンで適当にチャンネルを替えると、ニュースキャスターが固い表情で原稿を読んでいる。

何でもここ数日の間に世界中で不可解な行方不明事件が多発しているらしい。

大学の授業をサボり、ずっと家に籠っている私も見方によってはある意味行方不明なのかもしれない。

そんなことを考えていたらあっという間に3分が経った。

出来上がったカップ麺の蓋を開けるのと同時に、友人から一通のメールが届いた。


『ごめん。今日は忙しいから無理』


これで何度目だろう。

みんな、なんでそんなに忙しいの?

時間なんていくらでもあるはずなのに。

忙しない世の中で時間が止まっているのは私だけ。

欠伸をしながら、私はスマホを雑に放り投げた。

カップ麺はすっかり伸びきっていた。

まるで時間を無駄にしている私みたいだ。

私は何になりたい?何がしたいの?

一体どこで選択を間違えたのだろう。

そんなことを考えると涙が溢れそうになる。

いくら考えたところで、改める気などないくせに。

冷めたカップ麺をすすりながら、私はゲームのリセットボタンを押した。

その瞬間、テレビの画面が眩く光った。

私は堪らず目を瞑った。


『井上梨名さん、あなたはBANされました』


遠くから女の人の声が聞こえた。

誰?私を知っているの?

BAN…禁止?どういうことだろう。

目を開くと、そこは自分の部屋ではなく、まるで迷路のような建物の中だった。



続く。

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