事件現場
日吉の運転に揺られ約20分。ようやく、事件現場に到着した。少し人里離れた場所で、周りには、建物が何も無い。パトカーが既に1台停まっているようだ。車を降り、玄関まで行くと、表札には「中井」と書かれてある。家に目をやると、築20年以上は経っている様に見え、大きめで金持ち風の佇まいだ。さらに、10坪弱の離れは、最近建てたものなのか新しく見える。
俺達に遅れて鑑識のメンバーが来ると、写真を撮り始めた。最初に到着していた警察官2人の先輩、斉藤から、俺達は状況を確認した。
被害者は
事件現場は一戸建ての隣に建てられた離れで、死因は鈍器の様な物で後頭部を複数回殴られた為のようだ。凶器はまだ見つかっていない。部屋が荒らされていないので、物取りの犯行では無さそうとの事。争った形跡が無いので、顔見知りの犯行ではないかという見解だ。
被害者の妻、
被害者のスマホ発信着信履歴には
日吉が近寄って来て小声で話す。
「中井透ってミステリー小説家らしいですよ」
「そうなのか? 聞いた事無いな」
「俺も知らないですけど、そこそこ売れてるみたいです」
何故か、日吉は自慢気に話してきた。有名人の知り合いが出来たみたいなノリなんだろうか?
さて、雑談はここまでにして本業に入ろうと思った時、日吉から話し出す。
「息子、学の犯行で決まりですか?」
「まあ、普通に考えればそうだな。事件後、行方をくらましているし・・・」
「そう言えば、息子もミステリー小説を書いているみたいです。小説投稿サイトにアップしてるとか。何かトリックを使った殺害方法を思いつきそうですね」
「いやいや、アリバイも無いし、最有力容疑者になっているのにトリックも何もないだろう」
「確かにそうですね。あと、自殺って可能性もありますよね? ミステリー作家らしく、他殺に見えるようにして・・・」
「かなり難しいが、可能性としてはあるだろう。その場合、仲の悪い息子を犯人に仕立てあげるという事になりそうだが、そうなると、遺産を全て渡す事になる。嫌いなヤツに遺産を渡すような事をするだろうか?」
「そうですね。篠原美園はどうですか?」
「連絡をとってみないと分からないな。今から電話を掛けてみよう」
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