番外編・エリナ、遭遇する

「エリナ、そんな男と付き合うのかよ。眼鏡で、いかにも根暗だろ。ソイツ」


 会いたくないのに、会ってしまった、ぷぷっと笑うアイツ。その横に、私の【学校の友達】、由奈ゆなが寄り添い、一緒になって笑っている。

 そっか、あなた由奈、ソイツが好きだったんだ。もしかして、あの噂を流したのって――。

 なんとなく、事情がわかった私は、ふぅとため息をつく。


「あー、そんなんだから、急に黒に染めたのかよ! ソイツに気に入られたいからってか? はは、お似合いだな」


 ムカムカして、頭の血管がぷちっと切れそうだけど、隣に立つ、彼がぎゅうっと手を握ってくれるから、抑えることが出来た。いなかったら、きっと――。


「お似合い? ありがとう。でも、他人からどう思われるかなんてどうでもいいかな。だって、私、今この人と出会えて、すっごく幸せだから」


 メイラが言った言葉、今ならわかる。

 他人から、どう見られたって構わない。私は、この人を幸せにする。私の事を見てくれる、すごく大切な宝物

 そう、決めたら心がきゅっと引き締まる。


「エリナ、行こう。急いで◯大に着かないと、教授との約束時間に遅れてしまう。あの人、怒ると怖いからさ」

「え? あ、うん。それじゃあね」


 急に、通っている大学の名前を出す彼に不満を覚えつつ、私は手を引かれて行く。彼の通う大学は、私達が通う高校の卒業生、進学率0%。そう、住む世界が違うっていう言葉が似合う場所だ。

 アイツらから離れた所で、私は彼に聞いた。


「何で、急に◯大って言うの? あれじゃあ、まるで私が学歴で選んだみたいな……」

「エリナに二度と絡まないように、諦めてもらおうと思って」


 そう言って、彼は笑う。

 いつか、王子様にしたような、牽制方法をアイツにも実行したってこと? でも、――。


「もう少し言い方……」

「ごめんね、俺、アイツに勝てそうなとこそれくらいかなって思ってさ」

「……全然、わかってない」

「ん?」


 彼がどれだけ、すごくて、どれだけ格好いいか。いっぱい教えてもらった。勝ってるとこなんて、いっぱいありすぎるよ。


「ダイスケ、ありがとう」


 ぎゅっと手を握り返して、私と彼は、本来の目的地に向かった。

 今日は、彼の本当のお父さん、お母さんと、彼を育ててくれたお父さん、お母さんに会いに行く日。

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