言っちゃった

「すみません、オレ……」

「……何をしたかは覚えているんだろう」

「あぁ、……覚えている。すみません」


 ザイラが何度も謝ってくる。さっきまで押さえつけていた彼とは違う、いつもの彼の雰囲気に戻っていた。


「アルテはどうなってしまったの?」


 私はグリードに聞く。ザイラは目が覚めたのに、アルテは何が違うの?


「魅了の魔法。強く願いすぎると、このように、……人形のようになってしまう」

「治す方法はわかりませんか?」


 グリードはふるふると首を横にふる。

 この状態にした、アナスタシアはどこかに消えてしまった。どうしたらいいの? 私はアルテの名前を何度も呼んだ。


「ありゃ、これはまたややこしくこんがらがっているねぇ」


 扉を半分開けて顔を見せる子ども。


「ユウ……」

「えりなちゃん、なほちゃんに聞いてきたんだけどさー、なほちゃん全然言うこと聞いてくれないんだよ。困るよね」


 はーっとため息をつきながら、こちらにぺたぺたと歩いてきた神様ユウは私の前で立ち止まり、アゴに手をあてて考えていた。

 そうだ、神様ならこの魔法をとく方法を知らないだろうか? 腕輪をくれたのだって、この人なんだから。


「ユウ、アルテが、腕輪の魔法で」

「あー、うん。わかってるんだけど。ただなぁ」

「ただ? どうしたらいいの?」

「えりなちゃんは絶対が約束されたら楽しい?」

「何のこと?」

「絶対ってツマラナイんだよね。努力もせず100パーセント叶うなら、それはもう――」


 子どもが子どもらしく口を尖らせる。


「だから、ヒントだけ! 前回と今回で彼の違いはなーんだ?」

「前回と今回……?」


 前回って、レースの時のこと? あの時と今の違いって……あっ!


「腕輪?」


 そう叫ぶと、にこりと笑って、ユウは私達の前から姿を消した。

 まって、わかったところで、これどうやってつけはずしするの? 何も解決してない!


「エリーナ様、今のは?」

「…………」


 二人がこちらをじっと見ていた。でも、今はかまってられない。

 私はあの日を必死に思い出す。あの時、どうやって彼に腕輪がうつった?

 たしか、ぎゅっと腕を掴まれて……。


 アルテの腕をぎゅっと掴む。そして、心の底から叫んだ願った


「返して!! 私の――!!」


 帰ってきて! お願い!


「私のやっと見つけた宝物!!」


 腕輪が光り、あの時のようにまた、私の腕から彼の腕へ移動した。


「……エリナ?」


 上からかけられた声。私は上を見上げる。そこにある金色の瞳には、私の顔がしっかりと映っていた。


「アルテ? わかる?」

「あ、あぁ、その、……」


 アルテの顔が赤い。まだ何かおかしいのかな? 私は彼の次の言葉を待つ。


「俺は、宝物なのか?」


 ………………。

 しまった、観客あり公開告白させられましたーーーーー?!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る