最初のポイント
空に魔法で作った仮想空間のコースを飛ぶ。仮想ゲームの中の仮想空間。不思議な感じだ。
「皆、はやいな!」
「そうだね」
私はあまり抜かされない程度に力を抜いている。だって、ぶっちぎってしまうとあとで、難癖つけられたら大変だから。どこかの人みたいに金で買収とか、何かずるしたんじゃないか? ってね。
あまり目立たないように、でも上位から離されないように調整調整!
「アイツは、本気みたいだな」
「え?」
「あの金髪だよ」
「あ……」
紺色のハイエアートから見える、アルベルトはまっすぐ前を向いている。その顔は、本当にカッコいい、まさしく
「アイツが反省してるなら、考え直してやるか?」
なんで、今そんな事を聞くの? さっき、何か聞いたのかな。
私は思いっきり、アルテに蹴りをいれた。まあ、座った体勢からだから、ダメージは皆無だろうけど。
「今は! そんなこと、考えてる時じゃないですよね!!」
「あぁ、そうだった。すまない」
困ったように笑いながら、アルテが頷く。小さく肩が揺れているのはもしかして笑ってる?
「見えてきたぞ」
一つ目のサークルポイント。大きな輪っかが三つ真っ直ぐに並んで空に浮かんでいる。
「全部くぐり抜けて、行かないとなんですよね」
「俺の腕が試されるわけだな」
複数機が同時に通る大きさではないので、順番に通り抜けていかなければならない。
一番前のアルベルトはもう一つ目をくぐり終わっていた。
「まだ始まったばかりだし、先に通り抜けてもらいましょう」
「そうだな」
すぐ隣を飛んでいたアレンがスピードを上げて、ポイントに突っ込んでいった。この後ろについていけば。
「ん、何だこりゃ」
「うわ、何だろう? べたべた」
ポイントをくぐり抜けると、ハイエアートの機体にべっとりとした透明なゲル状のものがあちこちについていた。
「妨害工作か」
「何だろう。ウィンディーネ」
私は水の精霊をよんで、洗い流してもらおうとお願いする。
「アイツがやったのか? まさかこんな最初から仕掛けられるとはなぁ」
アレンのことだろうか。けど、彼は騎士を目指しているから、そんなことは……。でも――。
ウィンディーネは水を使ってゲル状のものを洗い流して、私の左肩に座る。
「後ろのヤツラにくっつかなきゃいいけどな」
は、そうだった。全然、考えてなかった。もし、くっついちゃったらごめんなさーい!
そんな事を頭の中で叫んでいると、後ろから爆発音がした。
「え、え? 何?!」
後ろの様子がわからない。何が起こったの。
『おっと、マシントラブルか? ハイエアートが一機爆発だ! パイロットはすでに脱出、回収済み。さすが、グリード様。しかし、いったい何があったのでしょう?!』
「うそ……っ?!」
そんな、まさかさっきのべたべたを私が後ろにしたから――。
「違う。リリーナのせいじゃない。運が悪かっただけだ!」
「でも――」
「パイロットは無事だろ? 前に進むぞ」
「……うん」
今までやってきたゲームのレースで、こんな展開を見たことがない私は心臓がぎゅっと捕まれたように感じた。
――――私がシナリオにないことをしようとしているから?
「次のポイントだ」
目の前にそびえ立つ山が見えた。
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