ついつい動いちゃう!

 岩の山という言葉が似合いそうな、茶色いゴツゴツした岩肌が見える山が連なっている。


「あの間をくぐっていくんだな」


 山と山の間に入るようにサークルポイントがある。


「そうだね。気をつけて」

「まかせとけ」


 アルベルトとアレンはもう入り口から先に進んでいるようで、姿が見えなかった。


「シルフ、お願い。さっきみたいにならないように風の盾を大きくしてもらっていい?」


 私が言うと、こくりと首を縦にふり、シルフがぎゅっと力を入れていた。

 一つ目のサークルポイントを抜ける。先ほどのような、何かが降ってくることはなかった。


「今度は、何もなさそう?」

「いや、まだわからないぞ。おっと」


 カーブに合わせアルテが舵を切る。広いところはいいけど、たまに狭くなる場所があってドキドキする。

 ゲーム開始当初はあそこによくぶつかっていたからか、私が操縦してるわけじゃないけれど、ついつい体が避けようと動いてしまう。その度に、アルテが何だか笑ってるような気がした。


「大丈夫だぞ。だいぶやりこんだからな。まあ、あっちじゃ1人乗りでもう少し小回りがきくが――」


 アルテの国にも、ハイエアートはあるみたい。前にルミナスがこの国の規格とか言ってたから、むこうとここのハイエアートは違いがあるのだろう。きっと、一番の違いは男女の二人乗り。もしこれが同じだったら、わざわざ相方探しなんてしてなかったよね。


「わかってるよ。だけど、体が勝手に動くの」

「あぁ、そうか。そういうこともあるか」


 アルテはそう言いながら、華麗に操縦して、この岩のコースを抜けていく。

 眼前に、アレンのハイエアートが見えた。


「あまり近付くと危ないか?」

「でも、アルベルトと差がだいぶ、あいてないかな?」

「あいつ、アルベルトって名前なのか」

「だから、今はそんなことー。って、えぇ!?」


 アレンが急にスピードを落とす。これは、危ない。ぶつかる!


「何考えてるんだかっ!」


 アルテは、叫び、急いで高度を下げた。

 まって、まって、こっちは墜落する!! あまりの急降下に思考がひゅっと飛びそうになる。上を見るとアレンの機体が通過していくのが見えた。


「うぁぁっっ!?」


 驚いている私を無視して、アルテは悪い顔をしながら急上昇する。


「ちょっと、やだぁ。もう、怖い!!」

「あはは、ジェットコースターみたいだな」

「もう!!」


 だけど、無事アレンにぶつかることもなく、私達はアレンの前に出た。

 ん、ジェットコースター? この世界に遊園地はあったかな?

 なんて、今はどうでもいいことか。後ろをちらりと見ると、アレンがいつも通りの顔で操縦していた。その機体には、ドロリとしたゲル状のものが何個か見えた。

 あれ……。


 私はウィンディーネを呼び、さっきみたいにアレンの機体からあのゲルを洗い流してもらう。彼らまで何かあったら、すぐ近くを飛んでいた私達が怪しまれるよね。


「リリーナ?」

「アレンの機体にも、あのどろどろがついてた。さっきみたいに爆発したら嫌だから、ウィンディーネに流してもらったの」

「……そうか」


 どうなってるのかな。アレンは犯人じゃないの? でも、じゃあさっきのは……?

 わからないことが続くレースは止まることなく進む。


 ここのサークルポイント五本目が見え、くぐり抜けると、また私達は大空へと飛び出した。

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