聞きたいことと上手く出来ないこと

「うわぁぁ! 美味しそう」

「どんどん食べろー」

「いただきます!!」


 今日はグラタンかな? 海鮮と、ブロッコリーとキノコ、いろんな具材がたっぷり入ってる。

 あ、余った材料をうまくつかってるのかな? 海鮮はリゾットで使ってたし、キノコとかはオムライスに入ってたし。ヤバい。在庫管理とかやりくりも上手そう……。

 それにしても――。


「おいひぃぃぃ」

「しがひになってるぞ」


 くくくと笑いながらアルテもグラタン皿をつっついている。

 あ、ちなみにご飯を食べるときは、テーブルの下で足と足を当てている。あまりほめられたことじゃないかもしれないけど、片手がふさがると食べにくいからしょうがない。


「だって、だってすっごく美味しいんだもん。アルテはいったいどこでこんな腕を磨いたの?」

「どこでって、あー。……一人でも旨いもんが食べたかったから、練習したんだよ」


「……そうなんだ」


 何故か、少しのがあったことに、私はひっかかりを覚えた。


「すごいね、私もいつかこんなに美味しいご飯作りたいな!」

「そうだな、旨いもんの味をしっかり覚えておけば上達もはやいだろう。いっぱい食わせてやるよ」


 ドキリとしてしまう。何だろう、その、これからも食べさせてくれる的なセリフ。腕輪を返してもらうまでの、期間限定なのに。


「――ありがとう、楽しみにしとく!」

「おう」


 私は、ぱくぱくとグラタンを食べすすめながら、彼の目を見た。その瞳に水色が映っている。


 私、だけど、私じゃない。この子ライバル役のお嬢様の姿が――。

 そうだ、この世界で好きになっても、不毛なだけじゃないのかな。結局は私じゃない。それに、アルテだって、好きなのは妹姫メイラだから――――。


「どうした? 苦手なモンでも入ってたか?」


 私が考え事で、とまっていたからなのか心配してくれる。


「ううん、何でもばっちり食べられます」

「そうか」


 考えたって、仕方がないか。

 でも、気になるな。私は、決心する。

 夜に聞いてみよう。彼が、妹姫のどこを好きなのか。

 外見だけで、決めたとかならきっと……、そうきっと諦めがつく。


 ◇


「電気消すぞ」

「うん」


 私はぎゅっとブランケットを掴む。

 いざ、決めて、聞くぞと思っているけれど上手く聞ける気がしない。


「おやすみ」

「おやすみなさい」


 暗くなった部屋で、ぼんやりと彼の輪郭が見える。

 大きくて、でも不思議と恐怖は感じない。


「ねぇ、アルテ――」

「ん、何だ?」

「アルテは…………レースで勝ったらその、妹姫メイラ様の、……あ……会ったことがあるの?」


 あれ、聞きたいことと違う気がすることが口から出たぞ?

 ぼそぼそと言ったから、アルテも聞き取れたのかわからないけど。

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