急な雨と二人
「うぉぉぉぉぉ」
「あはははは」
今日もまた走る。アルテが私を抱えて。
「スコールが降るとか反則だろぉぉ!!」
「ジャングルにはつきものですよねー」
急な天気の変化で、サラマンデルはまた使えなくなってしまった。
「あ、あそこ。洞窟があります」
「じゃあ、ちょっと休んでいくか」
ぽっかりと口を開けた洞窟に私達は滑り込んだ。
「ふぅ、濡れたな――」
「びしょびしょですね」
アルテのサラマンデルとかげちゃんは彼の肩で震えていた。
「火をだせ、サラマンデル」
アルテが命令するがサラマンデルはプルプルと震えたままだ。
「火をだせーーー」
「もー、無理させちゃ駄目だよ」
私はジャンプして、アルテの肩からサラマンデルをすくいあげ自分の手のひらの上に置いた。なんか、「ぐっ」とか聞こえた気がするけど気のせいだろう。
「いっぱい濡れちゃったもんねー」
手で拭ってあげると、サラマンデルは嬉しそうに目を細めていた。
「おい」
「何ですか? アルテは自分でなんとかしてください」
「いや、そうじゃなくてだな」
洞窟の奥をじっとアルテは見ていた。暗いけど、もう少し奥に誰かいるみたい? 肩に置いていた手を移動して、アルテは私の手を掴み引っ張る。サラマンデルとかげちゃんが落ちないように私は自分の肩に乗せてあげた。あ、精霊は空が飛べるんだっけ。まあ気にしない。
「火を使ってるみたいだな。悪いヤツじゃなければあたらせてもらうか」
こんなところにくるのはダンジョンに用事がある人よね? 私はアルテのうしろにくっついて人の気配がする奥へと進んでいった。
そこで出会ったのは、見覚えのある男性二人だった。
◆
今日も二人の部下の報告を聞く。
「エリーナはまだ見つからないのか?」
「は、もしかして、外に出られてしまったのでは?」
「そんなはずは、あのエリーナに限って……、一人でどこかに行くなど――。両親から溺愛され、僕からも愛され、王妃になる勉強しかしてこなかった彼女が、庶民の暮らしている場所で生きて行くなどと……」
到底無理な話であろう。僕は必死に考える。まさか、誰かに拐われてしまったのではないだろうか。
そうだ、その可能性が高いな。
「捜索範囲を拡げろ! 数人下につける」
「はっ」
「殿下、アナスタシア様ですが……」
「知っている――――」
今度は第二王子、弟のクレスヘラと城の中で仲睦まじく会話を交わしていた。
僕はそれを見た瞬間、隠れてしまったのだ。
僕に向けていたあの笑顔で、話しているアナスタシア。馬鹿な、そんなはずは……。
「殿下、アナスタシア様は諦めら――」
「駄目だ! 駄目だ、駄目だ!!」
二人の視線を遮るように僕は、両手で目を覆った。
クロネが横で何か言いたげであったが、僕は全員を一度部屋から下がらせた。
◇
炎を囲み、暖をとっていたのは攻略キャラの二人。
料理人のザイラと魔術師グリードだった。
って、めちゃくちゃ知り合いじゃないーーー?! もしかして、ピンチ?! 父親に居場所がバレちゃうー?!
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